疎外感2
駅の時計台の下に八代は立っていた。
「すいません、待たせちゃいました?」
マミがすかさず駆け寄り、上目遣いで尋ねる。
「いや、さっき来たとこだよ」
「あっ、今の流れってなんだかカップルみたいですね! ふふっ」
マミが口元を両手で覆い、ご機嫌に笑う。
八代は返答に困ったように、視線を彷徨わせた。その拍子に私と目が合う。
「若葉、疲れてんのか?」
「え? 普通に元気だけど何で?」
「ちょっと怖い顔してたぞ」
「えっ」
まったく自覚がなかった。言及されるほどひどかったのか。
「えっ悠、大丈夫?」
気遣わしげに首を傾げるマミに、「うん」と返す。
「なんかいつの間にか距離が縮まってないか? 二人とも」
私のことを呼び捨てにしたマミに、疑問を持ったらしかった。
「今日から一緒に登下校してるんです。悠と幸とわたしの三人で。だから他人行儀なのはやめようってことにしたんですよ!」
「へぇ、そうなのか」
「そうだ、悠。連絡先交換まだだったよね? しよ!」
「うん」
「悠は一回来たよね~、うち」
「うん」
駅前を離れて、私たちは現在、マミの家へと向かっていた。
「若葉が?」
八代が大きく目を見開いて、私を見る。酷く驚いている様子だった。マミを毛嫌いしている私が、マミの自宅を訪問するのが不思議なのだろう。
「樹里亜さんに連れてこられたの。それで不審な男についての調査の協力を頼まれた」
言い訳するように、早口に言い切る。
「樹里亜に?」
「話したいことがあるって言われて――私とマミに頼み事があったの」
「それで、これからは三人で登下校してほしいってお願いされたんですよ、樹里亜先輩に」
「人数いた方が、幸も安心できるだろうしな。しかし意外だな」
「意外? 何がですか?」
「いや、何でもない」
私には八代が言いたいことがわかった。樹里亜が幸をそれほど心配していることが、予想外だったのだろう。
けれど樹里亜は表に出さなかっただけで、妹を愛していたのだ。
真実を告げようとする私に、余計なことをするな、と釘を刺した樹里亜を思い返す。
樹里亜は不器用なのかもしれない。愛情の伝え方がド下手くそなだけで、ちゃんと家族を思っていた。
それに対して、良かったね、と心から祝福しているはずなのに、本当に喜ばしいはずなのに、何故だか胸に棘が刺さったような感じが、わずかに私を苦しめる。
もしや仲間を失ったような気がして、寂しいのだろうか。私は、そんなに勝手な人間なんだろうか。
そんなわけはない、と頭に浮かんだ考えを打ち消し、先導するマミの背中を見据えた。




