樹里亜の誘い
『それはまずいんじゃないか?』
八代に、今日幸の家であったことをメッセージで伝えると、緊迫した文面が返ってきた。
『だよね。けど情報が何にもないし、手も足も出なくない? それがムズムズして、すごく嫌な感じ』
手掛かりがゼロでは、手の打ちようがない。
こんなふうに一歩も動けずにいる間に、もしも幸に何かあったら――。
そう思うだけで、不安と恐怖で寿命が削れるようだ。
『身の回りを注意深く観察するのと、幸を絶対に一人にさせないようにするくらいか。俺も出来るだけ気に掛けるよう努めるけど、悔しいが仕事もあるし、そこまで一緒には居られないんだよな……ごめん』
『八代は仕方ないよ。生活がかかってるんだから。そういうことなら私に任せて』
『頼もしいな。だが若葉も気をつけろよ。ヤバい事態になったら、無理に深追いすんな。自分のこともちゃんと大切にしろよ』
『わかった。十分に気をつけるよ。心配してくれてありがとう』
今はとにかく、幸の周りに気を配らねば。
逸る気持ちを抑えるように、ゆっくりと深呼吸した。
「お姉が悠ちゃんと話したいって言ってるんだ」
翌日の学校にて、幸から告げられた言葉に、目を丸くする。
「何で?」
「それはわかんないけど……昨日家に帰ってきた時に、悠ちゃんと内緒で話したいことがあるって言ってたの」
「内緒話……」
重要そうな響きに、ひどく興味を惹かれる。樹里亜は、何か大切なことを私に伝えたいのでは――。
思い当たるのは、幸に関することだ。であれば、断る道理はない。
「わかった。OKって伝えておいて」




