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殺してくれてありがとう  作者: 絶対完結させるマン


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親友の告白

 月曜日の放課後になった。


 「放課後うちに来れる? ちょっと話があるの」と幸に誘われたので、お邪魔させてもらうことになった。

 「それでどうしたの? 話って」


 リビングの柔らかいソファーに座り、少し身構えながら尋ねる。


 「うん。あの、私が中学のとき、酷かったって前にちょっと話したと思うんだけど……覚えてるかな」

 「覚えてるよ」


 マミのことなど話すんだろうか。幸の口からどんな言葉が語られるのか、ドキドキしながら待つ。


 「エリちゃんには、話したことあるんだけど――」

 それから幸はゆっくり語り出した。


 クラスの盗難騒ぎ。友達のために行動したこと。何故か犯人にされてしまったこと。

 そして腹心だと思ってた友達に、糾弾されたショックについて。


 「本当に信じられなかった」

 幸は、大きな両目から雫をこぼす。


 「マミちゃん――友達の名前なんだけど、その子がまったく身に覚えのないことを、まくし立てているんだもん。私……マミちゃんのこと一番の親友だと思ってたんだ」


 そのときのことを思い浮かべたのだろう。身体が震え、涙が止まることを知らぬ勢いで流れている。


 八代から既に聞いていた話だ。しかし幸本人から、こんな風に悲痛を伝えられるのは、ダイレクトに来る。

 この出来事について聞くのは二度目だというのに、私も泣き出してしまいそうだった。


 「最初は言い返そうとしたんだと思う。でも気付けば頭ん中真っ白で――何も考えられなくて……とりあえず、周りのみんなが、私が謝るのを望んでるってことはわかったの」

 「幸……」

 「だから、謝って……今だにあの場面がフラッシュバックして、しんどくてっ……!」

 「わかった! わかったから、それ以上はもう……!」

 幸に駆け寄って、震える身体を抱き締めた。


 私のぬくもりなんかが、どれほどの支えになるのかわからないけれど、とにかく幸が楽になってくれ、と祈るように両手を回す。


 「こんなこと悠ちゃんに話しても、困らせるだけになるから、言わないって決めてたんだけど……この前マミちゃんがクラスに来たでしょ?」

 「うん」

 「マミちゃんと仲良いのかなって思って。中学での私のこと聞いたのかもって。最初は小さな気がかりだったけど、どんどん大きな不安になってきて」

 「何も聞いてないし、言われたとしても絶対信じないから、安心して。あいつとは仲良くもないから」


 宥めるように、幸の背中を叩く。八代が私にしてくれたみたいに、大丈夫だと伝えるような優しい手つきで。


 「私は幸を信じるから。誰かの言葉で簡単に離れていったりしない」

 「ありがとう。私また同じ目に……遭ったらどうしようって……」

 「大丈夫。マミの時みたいな裏切りはもうないよ」

 「良かった。本当にっ、良かった……!」


 マミの裏切りに、心底打ちのめされたのだろう。どうか間違いやただの悪夢であってほしい、と願い続けたに違いない。

 幸と一緒になって涙を流しながら、マミに対する嫌悪はより強まった。


 八代に伝えるべきだ。

 マミに何を言われたとしても、もう関わらないべきだと。

 幸に隠れてマミと会うことは、今泣いている幸への裏切りになる。


 「大丈夫だからね」

 幸の背中をさすりながら、マミとはもう会わない、と決意した。

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