ライバル心
マミとまた会う機会は、思っていたより早く訪れた。
ファミレスで会ったのと同じ週の土曜日。八代はマミから、「出掛けませんか」と誘われたそうだ。私もそれに着いていくことになった。
一番早く待ち合わせ場所に来た私は、現在マミに睨み付けられていた。
「何でいるの」
静かな苛立ちを感じさせて、マミは目付きをより一層鋭くさせる。
一瞬怯むが、負けじと背筋を伸ばして、事も無げに言い放つ。
「八代が私も一緒だとありがたいって頼んだの」
「……聞いてない」
それもそのはず。私が来ることは、事前にマミに伝えない方が良い、とあらかじめ八代に伝えておいたからだ。
マミは男性恐怖症以前に、八代に恋している。そのため、なんとか理由をつけて、私を引き離して、二人きりになろうとするだろうから、出鼻をくじきたかった。
見るからに落胆した彼女を見て、少し意地の悪い感情が湧いてくる。
「お待たせ」
最後に八代が到着し、私たちに軽く頭を下げる。
「いえ、さっき来たところですっ」
「私もそんな待ってないよ」
「そうか、なら良かった」
マミは、先程までのピリピリした空気を払拭させるように、百点満点のスマイルを見せる。
「じゃあ行きましょう!」
マミが八代の手を掴んで歩き出す。それを出来るだけ見ないようにしながら、そういえば何処に行くのか聞いてなかったな、と思う。
聞いてみようか、と思ったけれど、何となく話しかけにくい気がして、黙って着いていった。
着いた場所は、プラネタリウムだった。一体何年ぶりだろう。
意外と空いていて、三人とも同じ列に並んで座れた。
私を真ん中にし、右隣に八代、左隣にマミが座る。
マミと八代が隣にならないように、マミがトイレに行っている隙に、座席のチケットを買っておいた。
マミに、「混みそうだったから、買っておいたよ」とチケットを手渡したら、マミは一瞬、瀕死の蝉を見るような目を向けた後、「ありがとー」と言って受け取った。
会場に入ってから、マミは静かになった。隣にいる私とは、特に話したいこともないようだった。
時間がきて、いよいよ講演が始まった。暗くなり、周りの人の顔もろくに見えなくなる。
両目に美しい世界が飛び込んでくる。時間がゆったりと流れていくような、心地良い感覚に包まれる。
素晴らしい光景に夢中になっていると、左側からその時間を邪魔する痛みが与えられた。
ギョッとして左を見たら、マミが私の足を、少し先の尖った靴で踏んでいた。
明らかに故意だとわかる、ぐりぐりと力を加える踏みつけ方。
急いで足をどかし、自身の座る席の内側に隠す。全力をかけられていたわけではないので、すんなり抜け出せることが出来た。
マミの顔はよく見えなかったが、きっと悪意に満ちた表情だったに違いない。
やはり、私を邪魔者だと思っているな。彼女は八代と二人だけで過ごしたかったんだ。
このいかにも良いムードに持っていけそうな星空の下で。
さっきの攻撃は、それをお陀仏にした私への制裁だろう。
私は暗闇の中で、せめてもの抵抗として、マミを軽く睨んだ。




