マミからのお願い
「若葉さん、2組の人が呼んでるよ」
昼休み。クラスメイトに言われて入り口を見ると、マミが顔を出し、こちらを見て手招きしていた。
私は、幸に「行ってくる」と告げて、マミへと駆け寄る。
去り際にチラリと幸に視線を向けると、マミを見つめて表情を固くしていた。
私は、マミに屋上に連れて行かれた。残暑がきついからか、外で昼食をとる生徒は一人もいない。
「ごめんねー。食べてるとこだったのに」
マミがまったく悪いと思ってなさそうに言う。
「別に。それで用件って?」
声が冷たくなりすぎないよう意識する。
「あ、そうそう。ちょっと頼みごとがあるんだけどー」
マミが笑いながら、クルッと振り返る。
「お祭りの日さー助けてくれた人いたじゃん?」
八代のことか。私は「うん」と返す。
「若葉さんの彼氏なの?」
「違う」
「じゃただの友達なんだ?」
「そうだよ」
もしかして、マミは。
「お礼がしたいから紹介してくれないかな?」
私が予想していたセリフを吐くマミ。
自然と顔をしかめていたのかもしれない。彼女が胸の前で手を振り、言う。
「ああ、変な意味じゃなくてさ、恩人だし改めて挨拶したいじゃん?」
マミはすでに警察署で、八代に助けてもらったお礼を言ったらしい。
「やっぱさ、菓子折りとか必要かなーって」
確かにあのままじゃマミも殺されていたかもしれないし、礼を尽くしたい気持ちはわかる。であれば、断るのも無粋なので、大人しく頷いた。
「わかった。訊いてみるよ」
「ありがと! ねぇその人って名前なんていうの?」
「八代襟人」
「襟人さんかー。知的な名前だね!」
マミは、夢見るような表情で、笑っていた。
その姿を見て、なんだか胸のあたりがむかむかするような、嫌な感じがした。




