幼い頃のこと
小学校低学年の頃だったかな。
エリちゃんと公園で遊んでた日に、同じクラスの女の子たちが来たの。
私はその子たちからちょっと意地悪されてたから、隠れようとしたんだけど、気付くのが遅かった。
彼女たちは私の方へ来て、悪口を言い始めたの。
その時エリちゃんは、忘れ物を取りに家に行っちゃってた。
早く帰って来て、と思いながらキョロキョロしてたんだけど、その態度が気に入らなかったのか、
「何ボーッとしてんの!」
ひとりの子にそう怒鳴られて、バチンと頬をはたかれた。
それが鶴の一声になって、他の子達も蹴ったり掴みかかったりしてきた。
堪えきれずにグスグス泣いていたら、エリちゃんが帰ってきてくれてね、女の子たちの間に割って入っていって、
「逃げろ!」
って叫んだの。けどエリちゃんを置いて逃げれなくて、
「でも……でも」
とかもじもじして渋ってたら、
「なんとかできるから、信じて待ってろ」
そう言って、ニカッと笑ってくれた。
エリちゃんがそういう笑い方をした時、いつも大丈夫になっていってたから、今回も安心して、私はようやくその場から離れることができた。
しばらく走り続けて、ふと結構な時間が経ったことに気付いたの。それで公園へ戻ってきたら、エリちゃんが一人で立っていた。
声をかけると、
「あいつらは逃げてった。もう大丈夫だ」
その言葉を聞いて、上級生のエリちゃんに諭されて、あの子たちも納得してくれたんだって思った。
それ以来、意地悪もされなくなったから。
「またああいうことがあったら言えよ」
エリちゃんは、そう言ってくれた。
これが私の中で、エリちゃんの株が爆上がりしたエピソードだよ。
「格好いいじゃん」
「でしょー?」
話を聞けば聞くほど善人に思えるんだけど?
私の中で、『何故?』が更新され続ける。
そんな私をよそに、幸はニコニコしながら、お弁当を口に運んでいた。
考えた末に八代のことは、交流を続けていって判断しようと思った。
まずはマミが転校してきたことを報告しておこう。
『マミが転校してきたよ。別のクラスだけど』
簡潔に書いて送信する。
『不幸中の幸いだな』
さほど間を置かずに返信がきた。
『うん。異変があったらまた連絡する』
『頼む』
やりとりが終わる。八代はメッセージでも変わらずちょっとぶっきらぼうな感じだな、と思った。
授業中は、あまり集中できなかった。ここ数日であまりにも考えることが多すぎる。