表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺してくれてありがとう  作者: 絶対完結させるマン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/165

あの時の人

 ***


 「――全て読み終わったようですね」

 目を白黒させている私を見て、田中麗さんは言った。


 八代の父の日記に出てきた()()。その娘が目の前にいるという事実に、驚きを禁じ得なかった。


 「その手記は、父が書いたものです。私はつい最近、引き出しの奥に入っていたそれを見つけたんです」


 淡々と説明する麗さんからは、感情が読み取れない。一体何を考えているのか。そして――。


 「どうやって私にたどり着いたんですか?」

 数ある疑問の中でも、とりわけ気になることを問う。


 麗さんは、父が持っていたタイムリープ能力の存在を知り、能力を譲渡された人を辿ろうとしたのだろう。

 だけど、彼女が訪ねるとしたら、八代の元が道理ではないのか。


 手記に書いてあったのは、八代の父に移したことだけだ。その後、息子から私へと能力が渡っていったことは、麗さんは知りようがないはず。

 それとも、既に八代のところへ行ったのだろうか。それで八代から、タイムリーパーは若葉悠ですよ、と教えられて、ここへ来たというのか――。

 いいや、そんなことがあったら、八代から何も報せがないのは、おかしい。


 かくして返ってきた答えは、私が一ミリも予想していないものだった。


 「朝の公園内での、八代さんと若葉さんのお話を、聞いたからです」

 「えっ……!? あの時の会話を? あなたはあの場にいたんですか?」


 「はい」と言って、麗さんは申し訳なさそうに眉を下げた。


 「すみません。盗み聞きするつもりはなかったのですが……タイムリープという単語が耳に入ってきたもので、つい園内へ入る足を止めて、聞き入ってしまいました」

 「あっ! そういえば――」


 私の記憶が、呼び起こされる。あの朝、話が終わって互いにしばらく無言でいた時、背後の入り口から若い女性が現れたのだった。

 今の今まで、まったく気付かなかった。あの女性は、麗さんだったのだ。


 「私は、能力が父の友達の八代さんから、その息子さんに、そして最終的にあなたに渡ったことを知りました。それで卓造さんから、家の場所を教えてもらったのです」

 「そういうわけでしたか……」


 私にたどり着いた理由は、わかった。しかし――。


 「どうして訪ねて来たのでしょうか。私にこの手記を読ませたわけは、一体何でしょう」


 麗さんは、何を望んでいるのだろう。

評価や感想、ブックマークなどしてくれたら、嬉しいです!まめに更新していくので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ