あなたがタイムリーパーですか?
結局、好奇心に負けて、彼女を家に上げてしまった。
「すぐに紅茶を用意しますので、少々お待ちください」
「ありがとうございます。あっ、私の持ってきたお菓子、とても紅茶に合うんですよ。せっかくなので、一緒に食べてください」
リビングに案内された彼女は、にこやかにそう勧めてくる。
「じゃあ、一緒にいただきます」
渡された箱の包装を開ける。マドレーヌのような焼き菓子で、確かに紅茶との相性は、抜群そうだ。
「それで……私に話って何でしょうか」
テーブルを挟んで、互いに向かい合う体勢になる。
「はい。それなんですけれど……」
田中さんは、少し前屈みになりながら、私と目を合わせる。
「あなたは、タイムリーパーということで、間違いないでしょうか」
一瞬何を言われたのか、わからなくなった。
「は、はい? 何ですか?」
質問の意図を掴めず、訊き返す。
「時を遡ったことがあるか、ということです。私は、そのような事象があることを、知っています。取り繕おうとしなくても、よろしいですよ」
彼女は、タイムリープ能力の存在を、知っている――。
田中さんは、一体何者なのだろう。疑問は尽きないが、とりあえず待たせていた返答をする。
「は、はい。私は未来から、やってきました。タイムリーパーで合っています」
正確には、タイムリーパーだっただけれど――あの不思議な能力は、現在幸のところに移っているのだから。
「そうですか。それを確かめた上で、見ていただきたいものがあるんです」
そう言って鞄から出してきたものを、受け取る。
「ここに書いてあることを、読んでほしいのです」
差し出されたものは、手帳だった。
困惑しながらも手帳を開き、記されていることに目を通す。
それは、手記のようだった。
評価や感想、ブックマークなどしてくれたら、嬉しいです!まめに更新していくので、よろしくお願いします!




