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殺してくれてありがとう  作者: 絶対完結させるマン


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初恋の自覚

 ガキの頃に一度だけ会ってから、何となく忘れられなかった奴だったってわかった時、久しぶりに心が踊る感覚がした。

 それから若葉と会っていくうちに、その感覚は強くなった。表情にハリが出るのが、自分でもわかるほどだった。


 再会した若葉は、良い意味で変わってないように見えた。昔公園で助けてもらった時と同じ、強い正義感と深い思いやり――そして高い行動力で幸を支えていて、そんな若葉を俺はすぐに信頼するようになった。


 だから、祭りのおかしなテンションに乗せられて、つい過去のことを一部だけ話した。


 今まで一人で苦しんでいたことを、打ち明けたくなっちまったんだ。若葉なら、俺の悩みを自分のことのように、真剣に受け止めてくれて、怒ったり悲しんだりしてくれる、と確信に近い思いがあったからだと思う。


 結局、後悔を一人で抱え続ける強さが、おれにはなかった、ってことなんだろうな。


 さすがにタイムリープのことは、言わないつもりだったけど、『弟さんもまた会いたいって思ってるはずだよ』って若葉に言われた時、気持ちが変わった。

 何もかもぶちまけてしまいたい衝動にかられた。こいつになら、どんな秘密も打ち明けられる、とさえ思った。


 今考えると、あの時は冷静じゃなかった。気持ちが高ぶり過ぎていたんだと思う。

 若葉があまりにも、優しかったから。

 それに若葉は、俺がずっと欲しかった言葉をくれたんだ。


 『八代は絶対良い兄だっただろうから、弟さんもまた会いたいって思ってるはずだよ』


 俺は、理人に兄として認められていたかった。家族と思っていてほしかった。

 俺がいて良かったと、あいつが思ってくれてたら、この上なく幸せなんだ。

 だからその言葉で、少し救われた気がした。若葉に話そうとした俺の判断は、間違ってなかったんだ、と思った。


 再会してから――いや、小学生の頃初めて会った時から、若葉に抱いていた唯一無二の感情が、肥大化していくのがわかった。

 俺は、初恋を自覚した。


 公園での出会いが何となく忘れられなかったのも、特別な感情があったからなんだ、とやっと気付いた。

 若葉にも俺のことを好きになってもらいたい。そして、心から信頼し合える間柄になりたい。

 そのためには、ありのままの自分を見せなければならない。若葉に自分の全部を受け入れてもらいたい。


 俺はあの日、若葉に告白しようとした。その後で、タイムリープのことや抱えてきた後悔を、全て話すつもりでいた。


 でも、いざ口に出そうとした瞬間、若葉が折野を見つけて、折野を追おうとして。それを俺も後から追いかけたら、ヤベー状況に出会って――祭りどころじゃなくなったよな。

 それから、バタバタしていって、若葉と再び会う機会が訪れたのは、9月になってからだった。

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