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殺してくれてありがとう  作者: 絶対完結させるマン


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日記を読んで

 そうやって過ごしているうちに、どんどん時間が経っていって――自分の進路を考えなければいけない時期が来ていた。


 何としても親戚の元を離れたい、という気持ちがあったから、働きながら勉強できる通信制にした。

 進路を決定したタイミングで、幸から「ウチで家事代行として働かない?」と誘われた。


 幸の両親が、海外住まいということは知っていた。学生の身で家のことに気を遣うのは厳しいから、家事代行サービスを利用している、ということも。


 「相場よりも高い給料を払えるし、エリちゃんなら、気心も知れてるから、私としても助かるんだけど……どう? いい話じゃない?」


 幸の提案は、渡りに船だったけど、俺のために相場より高い金を払わせるのは忍びないから、一度は断ろうとしたんだが――。


 「親からは、お金のことで遠慮はしないで、って言われてるし……それに私の家、普段誰もいないから、味気なくて……エリちゃんが来てくれるようになったら、きっと楽しくなると思うの」


 そう言うと幸は、寂しそうな顔をした。

 幸とは、中学に入ってから、交流が減っていた。だから樹里亜との仲も、クラスでの扱いも知らなかった。


 「仕事が終わった後、たまにでいいから残ってくれると嬉しいんだ。誰もいない家に帰るのって、結構侘しくて――そういうのも含めての高時給、ってことで……どうかな?」


 俺を助けようと思ったのも本当なんだろうけど、何よりも幸自身が望んでるようだった。

 幸は、両親は年に数回帰ってくるのみで、樹里亜とも最近は会うタイミングが合わないんだ、と言った。

 あのだだっ広い家で、一人きりなんだ、と。


 幸の両親は、なかなか帰ってこれないことを申し訳なく思って、せめて金銭面では子供に苦労をかけたくない、と思ってるんじゃないか、と幸との会話から感じた。


 「もし迷惑だったら、もちろん無理にとは言わないけど……」

 迷惑なんて、思うわけない。俺はありがたく幸の家で働かせてもらうことになった。


 それから中学卒業してすぐに、今住んでるアパートでの生活を始めた。

 中学の時よりもずっと忙しくなって、理人を捜す時間も減っていった。

 それに、俺はもう疲れてきていた。


 いつまでも理人の尻尾すら掴めない捜索を続けるうちに、だんだん希望が枯れてきていた。

 どれだけ必死こいて捜しても、全部無駄に終わるんじゃないか。大体あいつは、自分の意思で姿を消したんだ。

 ということは、こうして捜されること自体、理人にとっては、迷惑なんじゃないのか?

 その考えに思い当たった時、ぞわりとした。


 理人は、俺に何も言わずに出ていった。

 大切な家族と思っていたのは俺だけで、あいつはずっと俺のことを、親戚と同じように疎ましく感じていたんじゃないか?

 今ごろ、新しい場所で笑顔で過ごしているのかもしれない。兄の存在なんて、もう自分にとって、過去のことだと割りきっているのかもしれない。


 そんなことをぐるぐる考えていたら、親父が勤めてた会社から、連絡がきた。

 そう、日記のことだ。ほどなくして送られてきたそれを読んだ。

 読み進めていくうちに、日記を持つ手が、驚きと怒りで震えていった。

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