第二話
オオチ達、祈祷師の数はおおよそ二十人程度。それと比較すると水のソウル達は遥かに多かった。
ソウル達の大きさは様々だが、その中から取り分け大きなソウルが元凶となることが多い。
縦横無尽に動き回るソウルは、山で土砂崩れを起こしたり、川を氾濫させたりと、暴れ回っている。
その力はとても強力だった。
しかし、ソウル達の動きは遅く、二人一組の祈祷師たちに次々と撃破されていく。
オオチ達もまた、水の巨人と戦っていた。
巨人の繰り出す攻撃を大きく躱すヒラヤマは、その勢いのままに弧を描いて突進する。そして、右手に持つ剣で、巨人の足を斬りつけた。
グオオオオオオオっ! と大きく悶える巨人はバランスを崩し、そこをオオチが追撃する。
オオチの持つ斧で首を切断すると、大動脈を切られた人間のように、そこから水が溢れ出て、そのままソウルは消滅した。
ランク2のヒラヤマは、決定打を打つことが難しいため、先ほどのようにオオチのサポートに回る。
そして、ランク3のオオチがトドメを刺すのだ。
その繰り返しで次々とソウル達を撃破していくが、次の瞬間。
巨人にトドメを刺そうと、大きく飛び上がり斧を構えるオオチに、ヒラヤマの声が届く。
「オオチさん! 後ろ!」
その声に振り返ると、もう一体の巨人が頭上で手を組み、振り下ろそうとしているところだった。
オオチは身体を翻し、満を持して斧でその攻撃を防ごうとするが、重傷は免れないだろう。
祈祷師の戦いでも数はものをいう。二対一の有利な場面を築くことがセオリーだが、イレギュラーも有り得る。
振り下ろされた両腕がオオチと接触するその瞬間、割って入る影があった。
それは、オオチの新人時代に世話係として任命されたオンジという男。彼は片手でその攻撃をいなして、左手に持つ銃で三発、巨人の顔面に撃ち込んだ。
「僕の可愛い後輩に手出しはさせないよ」
そう言って、軽々と巨人を倒すオンジは、続けてヒラヤマがバランスを崩した巨人も撃破する。
このオンジという男こそ、ジャップ・ファム大幣支部のエースであり、最強の一角であるランク7なのだ。
普段は頼りないこの男だが、ソウルとの戦いでは無類の強さを誇る。
しかし、そんな彼も巨人の高威力な攻撃に、身体が応えたようだ。彼の右腕を見ると、大きくヒビが入っていた。
「オオチちゃん大丈夫?」
と、心配させまいと明るく振る舞うオンジに、オオチは心を痛める。
「私は大丈夫ですけど、先輩の腕が……」
心配するオオチを宥めるように、ニコリと笑って頭を撫でる。
「こんぐらい心配ないから、次行くよ」
そう言ってオンジは、次のソウルの撃破へと向かった。
こうしてはいられないと、続けてヒラヤマとオオチもその場を後にした。
愚作【祈祷師見習いと神の末裔】もご一読頂けたら嬉しいです。
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