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ハイカカオな関係  作者: 青山えむ
3/13

3話 メールアドレス

「スマホに貸したCDが入っているか確認してほしいって……」


 先ほど聞こえなかったと思い、私は同じことを言いました。


「そうなんです、お願いします」


 柏木さんはスマホを操作して、画面を探していました。


「まずはこれです」


 私が一番好きなバンドが表示されていました。一番好きなバンドの確認が最初で、なんだか嬉しかったです。それよりも驚いたことがあります。


「ジャケットも表示されるんですか」


 配信で音楽を買うとジャケットの表示はありますが、CDの取り込みでジャケットまでスマホに入るのは驚きました。しかも自主制作のCDです。どのようにして画像が取り入れられるのでしょう。


「そうなんですよ、便利ですよね」


 他のバンドの確認も終わりました。


「貸したCD、全部入っていました。ちなみに……どうでした? 気に入ったバンドとかいましたか」


「あー……まだサラッとしか聴いていませんけれど、小川さんって意外に激しい音楽聴いてるんですね」


 引かれたでしょうか。確かに、私は激しい音楽が好きです。けれどもアイドルもクラシックも好きです。良いと思った音楽はなんでも聴いています。柏木さんが好みのバンドも激し目だったので、近い曲調のバンドを貸しました。けれどももしかして、引かれたのかと思ったら少しショックです。


「小川さんておっとりしているから意外でした。でも知らない一面を知れて、なんかよかったです」


 私が黙っていると、柏木さんは言葉を続けました。


「もっとじっくり聴いてから感想伝えますね」


「はい、ぜひ」


 私と柏木さんは笑顔で会話を締めました。そう思った矢先です。


「あの……もしよかったらメルアド交換ってしてもいいですか?」


 どきん、と心臓の音が聞こえた。

 メルアド交換? 男の人からメルアドを聞かれるなんてこと、今まであったでしょうか。多分、初めてです。


「あっ、はい、いいですよ。交換しましょう」

 動揺が出ないように返答したつもりですが、私はどんな表情をしていたのでしょう。けれども柏木さんも、少し緊張した面持ちでした。それが少し、嬉しかったです。


「人目につくので、帰りに駐車場でメルアド交換しませんか。小川さんの駐車場どこですか? 自分そこに行きますので」


「A駐車場です。車は水色の●●です」


「じゃあ、このあとA駐車場に行きますので、お願いします」


「はい、お願いします」


 それじゃあ居室に戻りましょうかと、二人で居室に戻りました。柏木さんと一緒に歩いて私は、なんでもない表情を保つのに精いっぱいでした。その間も柏木さんは笑顔で他愛のないお喋りをしています。


 深夜一時半が、夜勤の終業時間です。お疲れ様でしたーと元気な声が飛び交います。みんな、仕事終わりが一番元気になります。


「お疲れ様でした」


 柏木さんに声をかけられます。柏木さんは笑顔で、私に目で軽い合図を送りました。


「じゃ、あとで」

 

 私だけに聞こえる声で、柏木さんはつぶやきました。なんだか秘密めいていて、どきどきしました。

 私はいつも通り退社して、A駐車場まで歩きました。他のみんなはB駐車場で、私が停めているA駐車場よりも会社に近い場所でした。

 ひたすら歩いてようやくA駐車場に着きます。エンジンスターターで暖気しておいた車に乗り込みます。


 夜勤の終了時刻、みんなが駐車場から出て行くなか、私の元へ車が近づいてきました。きっと柏木さんです。

 私は車からおりました。私を見た柏木さんは、私の車の隣に自分の車を停めました。


「すいません、お待たせしてしまって」


「いえ、そんなことないです。わざわざここまで来てもらって」


「いいんですよ。早速ですが交換しましょう」


 私はスマホを手に用意していました。


「じゃあ自分がQRコード出すんで読み取ってもらえますか」


「はい」


 柏木さんのスマホ画面のQRコードを読み取ります。ぽこん、と音がして私のスマホ画面に新しいアイコンが表紙されました。すぐに友達追加を押します。柏木さんのアイコンは「ヒロト」と書いてあります。柏木寛人(ひろと)、それが彼のフルネームです。


「自分も追加しました。ありがとうございます」


「こちらこそ」


 ぽこん、とスマホから音がした。


「あ、って送っておきます」


 画面に「あ」の一文字。


 誰だったっけ。以前メルアドを交換した人も、友達追加直後にメールを送ってきました


「こうするとトーク画面の一番上になるでしょう、そうなると私、安心するんだよね」


 確かに、連絡する頻度が高いとトーク画面の上になってすぐに見つかります。こういうことなんだろうし、柏木さんも、そういう気持ちなのだろうと思いました。


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