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クオリア  作者: ❁ゆずはる❁
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■チャプター9 「ラスボス」

「うわああぁぁぁああぁああ!!!???」

紫色の渦巻く空間に吸いこまれた私たちは勢いよく落下していった。下へ下へとどんどん落ちていく。強風が顔に当たり地味に痛い。髪の毛やスカートがバサバサと音を立てて暴れる。バッグが飛んでいきそうだったので、思わず脇をしめて体を縮こまらせる。瑠璃宮が私の腕を掴んだまま無表情で落下していく。この先に何があるのか、彼はわかっているのか?私は不安を覚えながら目をギュッと瞑った。

ふいに、体がふわっと浮いたかと思えばおしりに衝撃が走った。

「痛っ!?」

いつの間にか尻もちをついていた。私はおしりを優しく摩る。そんな私の隣では、瑠璃宮が平然と立っていた。

「やはりここに着いたか.......」

瑠璃宮の言葉に私は痛むおしりを未だ擦りながら立ち上がり、当たりを見回して呆然とした。

「ここ....体育館?うちの学校の....なんで!?」

ここは見慣れた体育館だった。生徒たちがよく利用する場所。どうしてここにワープしたんだろうか。

「トーノコ」

瑠璃宮が私を見上げる。

「今のうちにアイテムの整理をしておけ」

「えっ?アイテム?」

「武器を装備しろ。早く」

私は困惑しながらも、朝入手したハンドガンをバッグから取り出した。他は瑠璃宮に貰ったスタンガンやナイフがある。弾丸も何個かあるが、一体これから何が.......。

すると、体育館に隣接している体育準備室の扉ガタガタと音を立てて揺れた。中から複数の呻き声が聞こえる。まさか.......。

「来るぞ、構えろ!!」

瑠璃宮がそう言い、手榴弾を構える。その瞬間、体育準備室の扉が大きな音を立てて壊れた。扉が完全に崩れさり、中から大量の化け物が溢れて出てくる。

「.......やたら我々の周りに敵が近付いてこないと思っていたらここに待機していたのか。この時のためだけに。全く、暇な奴らだ」

!? そうだったのか。きっと、話の流れ的にこの大量の化け物を全て倒さないと進まないだろう。そしてこいつらを倒したあとは.......。

化け物たちがこちらに迫ってくる。瑠璃宮は奴らに手榴弾を投げつけ、距離をとる。私はとりあえず逃げ場を確保しようと体育館の扉に手をかける。しかしなぜか外側から鍵が掛かっており、ビクともしない。閉じ込められている。

「開かねぇ!!」

「クソっ。ここのフィールド内で戦えってことか!」

瑠璃宮が投下した手榴弾で煙が充満し、前がよく見えない。近くの窓を開けようと試みたがそれも叶わなかった。

化け物たちはまだまだ出現してくる。私は銃を構えたが、数が多すぎて誰を撃てばいいのか分からない。スタンガンやナイフもあるが、近接武器なのでリーチが短い。この状況で敵に近付くのは自殺行為だ。.......私は約立たずだ。いつもいつも瑠璃宮に助けて貰って甘えて。私は....何も、出来な.......

「トーノコ!」

瑠璃宮が叫んだ。

「僕の爆弾で攻めるからお前は漏れたやつを撃て!僕のサポートをしろ!」

「! ....分かった!」

そうだ。くよくよしてる場合ではない。私は少しでも瑠璃宮の役に立ちたいと思い、瑠璃宮が放った手榴弾の攻撃を受けてもなお生きている敵など、漏れているヤツらを撃っていく。数は多いが、 瑠璃宮の攻撃で大体の敵がダウンしていくため私は敵の頭にエイムを合わせ、ヘッドショットを決めてトドメを刺すだけだった。.......絶対勝ってやる。必ず生き残って瑠璃宮と元の世界に帰るんだ!

瑠璃宮が何個目かの手榴弾を投げ付け、敵があらかた片付いてきた。二人で力を合われば、こんなにたくさんの敵を相手にしても大丈夫。私たちに勝てる敵なんていないんだ。私が最後の一匹にトドメを刺すと、瑠璃宮が口を開いた。

「これで中ボスは何とかなったな.......。楽勝だった」

「そうだな。だけど次は.......」

瑠璃宮は私を見て頷いた。

「ああ。ラスボスだ」

彼は先程倒した敵たちに近寄り、何かを拾い集め始める。そういえば前に、瑠璃宮が運が良ければ敵が素材を落とすなんてことを言っていたのを思い出した。

「今ので大分手榴弾を消費したからな。より強力な爆弾を制作しておこう」

ラスボスとの戦闘に備えて準備をし始める瑠璃宮を見て、私も大分弾丸を消費してしまったのを思い出した。まだリロード用の弾丸があるが心許ないな.......。

「トーノコ。ほら」

瑠璃宮が私に何かを放り投げてきた。それは箱に入った弾丸だった。

「落ちていたから使え」

「おっサンキュ!」


しばらくして瑠璃宮が準備を終えたようだ。そして、それを待っていたかのように頭上で音がする。もう私たちは分かっていた。きっとラスボスはー.......

私たちは天井を警戒しながら見上げた。いつ来てもおかしくはない。きっと体育館の屋根の上にいるのだ。『あいつ』が。

ギシギシと音を立てて『あいつ』が体育館の上を徘徊する。体育館全体が揺れたが気にならない。瑠璃宮の爆弾の威力を至近距離で見てきた私にには、もう振動は慣れっこだった。

そしてその時は来た。

頭上からヒビが割れる音がした。天井が一気に崩れ始めて『あいつ』と共に落下してくる。ものすごい衝撃が身体中を襲い、爆風に飛ばされそうになった。頭にバラバラと天井のチリが落ちてきて、煙やホコリで思わずむせ返る。瑠璃宮というとガスマスクをしているからダメージは受けていないようだ。ずるい。なぜ私にもくれないのか。そう思っていると、体育館が徐々に落ち着きを取り戻してきた。そして煙が引き、『あいつ』.......『ラスボス』の姿がはっきりと見えた。

「ようやくお出ましか。待っていたぞ。さぁ、早く我々に息の根を止められるがいい」

瑠璃宮は『ラスボス』に向かって嘲笑しながら余裕たっぷり言い放った。.......そう、今朝私を襲ってきたあの『クラスメイトだったもの』に。

■チャプター9 「ラスボス」 クリア■

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