0-4 コールドスリープ
漂流生活2日目。
安藤は漂流の準備として、医療ブロックに篭っていた。正直言って医療面の知識は乏しい。今ここでマニュアルを頭に叩き込むしかない。数百ページに渡るマニュアルは専門用語だらけで難解だ。その上読めば読む程このシステムのリスクが見えてくる。
「コールドスリープ。思ってた以上の未完成っぷりだな。それに成功確率は高く見ても5%以下か。」
このまま食料とエアを節約しながら生活するよりは100倍マシか。安藤は3時間かけて熟読すると、コールドスリープの準備に入る。
まずは血液を抜く。血液が臓器や血管に残り過ぎていると蘇生時、すなわち解凍時にそれらを傷つけてしまう。その為、限界まで血液を抜く必要がある。
そして睡眠薬で眠った後、身体を凍らせる。
それから先はあるタイミングまで眠りにつくことになる。そのタイミングとは、このエウロスが地球に最接近したタイミング。地球の惑星情報を登録し、地球軌道に乗ったタイミングで解凍が始まるようにプログラムされている。安藤の計算では200年以内には戻れる予測。
エウロスで絶対零度環境下でも航行可能。施設内も氷点下まで気温は下がるが、コールドスリープしているので問題なし。
「こういうのを果報は寝て待てって言うのかな。」
なんて下らない独り言をいいながら安藤はベッドに横になる。下手をすれば今日が命日だったが、安藤にはそんな感覚はなかった。すでに極度の睡魔に襲われている。
このまま眠って、気がついた時は浦島太郎として発見される。
そんなことを願いながら静かに瞳を閉じた。