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「なに?団長じゃなくて私に相談って、もしかして恋愛相談?」

 マティルダがカウンターに提示した手紙をわくわくしながら開いた。

「違います、真面目な相談です」

「うーん、マティルダちゃんも見つかっちゃったかぁ」

 ミコトは手紙を読み終えると、残念そうにため息を吐いた。

 マティルダはその発言に疑問をもつ。

「私も、ですか?」

 他にも見つかった人がいるような発言だ。

「そう、何人か“半人神”がいたんだけどね、皆“収集の異形(コレクター)”に捕まっちゃってね」

「え!?」

 マティルダは目を真ん丸にしてミコトを見つめる。

「捕まったって、ミコトさんはフリュウさんの仲間じゃないんですか……助けたりはしないんですか……」

 なんだか裏切られた気がした。

 ミコトさんもいい魔王で半人神を護ってくれる、そう思っていた。

 だがそれは理想論に過ぎなかった。

「いつもならそうしてる、けど“収集の異形”ってかなり強い魔王らしくてね、本気で討伐に向かうともの凄い量の神威が空気中を漂うことになる、それで神の連中が軍隊連れてきてここの魔王は全員終わり」

 ミコトはカウンターの奥へ手を伸ばして飲み物を持ってきて、それを飲み干す。

 マティルダの期待に添えなかったと察して、ミコトはマティルダから目をそらした。

「それって、本当はいいことなんですよね」

「普通の人間目線なら、神は邪魔だから消してるだけ、そこに魔王の善悪や思想とか関係ないの」

 ミコトはおかわりを注いでくると、再び飲み干した。

「もう神数人きちゃってるから、多少暴れても軍隊がくることに変わりはないけど、私だけで“収集の異形”と闘うんなら相討ちかなぁと」

 ミコトはレベル8駆逐対象とされる魔王、彼女と相討ちをするのなら“収集の異形”もレベル8相当の実力があるとわかる。

「レベル8って、魔王だとどのくらいの位置なんでしょう」

 ピクッとミコトが反応した。

 顔をあげるとミコトはにこやかな笑顔になっている。

「えへへー、聞きたい?」

「は、はい」

 どうしたんだろう、と疑問に思っているとミコトはすぐに答えた。

 返事も待たずに答えるのだから、よっぽど言いたかったようだ。

「そうとう強い位置にいるんだよ私は、しかも他の魔王とは違って魔人を作ってないからね、私個人だからね」

 後に続く言葉は「魔人の部下を作ればレベル9いけるからね」だろうか。

 どちらにせよミコトは相当強い部類で、それに拘りがあるらしい。

「けどフリュウさん“収集の異形”を圧倒してましたよ、逃げられましたけど」

「団長と比べないで、勝てる気がしないから」

「そうですか」

 ミコトはまたしても拗ねるように顔を伏せてしまった。

 フリュウさんと違ってメンタル弱いのかな、とマティルダが思っていたが、ミコトはすぐに頭をあげた。

「そんなわけで団長がくるまで待ってたって言うのが私の言い訳なんだけどね」

「フリュウさんに任せるのが一番ですか」

「そうなるね、居場所がわかればの話だけど」

 ミコトは無造作に窓から外を眺めた。この広いアスト王国から1人の魔王を見つけ出す、慎重な魔王に対してそれは狙ってできるようなことではない。

 マティルダもそれは理解している。

(その居場所のヒントになる神威もなし、唯一の手がかりになりそうなのは、私だ)

 マティルダはとあることを決意をした。

「団長に内緒でいいの?その手紙のこと」

「はい、フリュウさんに伝えたら、私がこれからしたいことに絶対反対されるから」

 マティルダはミコトの横顔を見つめ、視線を感じたミコトもまたマティルダを見つめる。

「なにするつもり?」

「私が捕まって、そこで暴れます」

 暴れれば神威が放出され、それを手がかりに捜索してほしい、という意味だ。

 だがそれは大きな危険を伴う。

 拘束手段があった場合すべて無駄になる上、相手に“国殺し”の鍵を与えてしまうこと。

 マティルダは反対されると思っていた。だがミコトは違った。

「反対したいけど、お友達が人質にとられてるんでしょ、なら止まらないよね?」

 反対しても、とミコトがいい終えると、マティルダは強く頷く。

「だから、私を1人にする時間を作ってほしい」

 ミコトはフリュウからの信頼を得ている、ミコトなら護衛と称してマティルダからフリュウを遠ざけることができる、そう考えた。

 けっしてマティルダがフリュウを嫌っているわけではないが、この作戦は無理矢理フリュウを魔王にぶつけることだ。仕方がない。

「わかった、じゃあ3日くらいまってくれないかな」

 ミコトはマティルダに3本指を出して見せた。

「え、は、でも」

「その間、お友達の護衛はナキとルカにやらせるから、安心して?」

 マティルダの不安要素を正確に察して、ミコトは提案する。

「なにをする気ですか?」

「神の巡回ルートを見つける。せっかくだから神にも協力してもらおうと思ってね」




 朝方のピークをなんとか無事に抜け、動き回ったフリュウはぐったりと腰をおろしている。

「はぁ……やっと抜けたか……」

「お疲れさまです団長、はい、アイスコーヒーです」

 まったく働かずマティルダの話し相手になっていたミコトがフリュウを労う。

「ああ……ありがと、じゃなくてだな」

「はい」

 ぐったりしながら怒るという器用な感情を見せてフリュウがコーヒーを一気に飲み干した。

「なんでミコト働かないんだよ」

「マティルダちゃんから女性どうしの相談を受けまして」

 ここでミコトが切り札を投入した。

 同性でしか打ち明けられない悩みというのは必ずでてくる、こうなると異性にはつけいる隙は与えられない。

「そうか……」

 フリュウは渇いた喉を潤すと気力が戻ったようで、よっこらせと立ち上がった。

「それでマティルダの悩みは解決したのか」

「えーとっね」

「もちろん解決しましたよ」

「え」

 戸惑うマティルダをおいてミコトが笑顔で答えた。

「だからマティルダちゃんをここで働かせてもらえませんか?もちろん護衛は私に任せてください」

(なるほど!)

 喫茶店で働いている時間はフリュウの管理下ではなく、ミコトの管理下で動けるようになる、マティルダもミコトの意図がわかった。

「もしかしてその悩みって」

 フリュウが申し訳なさそうな顔をした。

「別に団長が居候してるから食費が増えたとか、そんなんじゃないよねー?」

「ちょ!?ミコトさん!」

 ミコトがマティルダに目で指示を出した、マティルダをそれに乗っかる。今のマティルダはミコトに真実を話されて必死に誤魔化そうとする女性としてフリュウの目には映っている。

「……それは、わかったよ」

 というわけで簡単にフリュウから了承を得ることができた。

「そういえば団長はなにしに来たんですか?」

「そういや忘れてたよ、情報通のミコトに聞きたいことがあってな」

 ミコトの声を合図にフリュウに魔王討伐者としてのスイッチが入る。

「神の連中の動向が知りたい、もう“収集の異形”の尻尾を掴んだのか、そこらへんの情報をな」

 フリュウのこの言葉を聞いて、ミコトに1つの案が浮かんだ。

「そうですね、3日ほど時間をもらえますか?」

「3日もかかるのか」

「いえ、今の調査状況だと3日ほどで神も尻尾を掴みますから」

 ミコトは自信満々で言い切った。フリュウもそれを信じることにした。

「わかった、それじゃあ」

 働くというマティルダを置いてフリュウが帰ろうとしたのだが、

「フリュウ団長、情報料金は前払いですよ」

 ミコトがフリュウを呼び止めた。

「え」

「でも団長お金持ってないんですよねぇ、これは体で払ってもらうしかありませんね!」

 ミコトは頷いて勝手に話を進める。

「ちょっと待った!俺はミコトの代わりに働いたよな!?」

「バイト初日で給料がでるわけないじゃないですか、さぁ!はやく私をかじってください!裏メニューですよ!」

 フリュウは感情論、ミコトは正式な商売をしている、相手になるわけがない。

「えー、ミコトはMなのかよ」

「私は団長に合わせてSでもMでもいけますよ!」

 フリュウが必死に時間を稼ごうとするが、すぐ返され、ミコトはじりじりと詰め寄る。

「知るか、とにかく食べないからな」

「じゃあ私がフリュウさんを食べます!」

 というわけでフリュウは捕まった。

「まじでパパッと食べろよ、俺は強い神威に触れると拒絶反応起こすんだからな」

「わかってますよ、ではいただきます」

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