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本屋の隅っ娘  作者: リアル
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[本上さん]

  駅から歩くこと10分程度で着く一階建ての本屋。

  ボロくもなく新しいって訳でもない、本当にそこら辺にある本屋。

  品揃えは申し分ないつもりだけど、時々お客さんからこの続編ありますか?と質問されることもある。

  まだ出てないから。ちゃんと調べてから来て下さいとは到底言えず、笑顔でまだ置いてないんですよぉと言うだけ。

  あとよくある質問で、まぁこれが一番難問なんだけど。


  「その隅っこに居る子はなんですか?」


  きたよこの質問!なんて答えれば良いの!?わかんない。

  説明するとこの本屋にはいつも隅っこ、本棚と壁の間に座って本を読んでいる女の子の店員が居て、容姿は黒髪短髪、背は155くらいとちょっと小さめ、それに一番許せないのが可愛いというところ。短髪っていいよね?


  「あーあの子は店長の娘さんで、シングルマザーなんでいつも仕事の時はこうやって連れてきてるんですよ!」


  事実ではないが、こういつも答えている。

  お客さんからはいつからか隅っすみっこちゃんと言われている。

  ひねって!!もっとなんかあるでしょ!

  ありきたりな名前だけど彼女にはちゃんと名前があって、本上ほんじょう 夢子ゆめこという。


  「優之介、お茶ほしい」


  片隅で本を読みながら頼み事。

 

  「本上さん?たまには自分で...ね?」


  「いいから持ってきて」


  可愛いからって...うん。

  ついつい他の人にレジを任せて買いに行く僕が居るんだよね。

  近くにコンビニがあるから助かります。

  買い物を済ませ、本上さんにお茶を渡す。


  「ありがとう」


  お礼が言えるところ悪い子ではない。


  「佐藤さん、これは何処に?」


  「あぁそれは...ここに。原さんは真面目で良いね!」


  「はい?」


  原さんは頭が良く背も女子としては高いし、黒髪ロングで可愛いときた!まったくもって隅っ娘ちゃんとは大違いだね。

  そういえば本上さんは頭良いのかな。

  どうでも良いこと考えてないで仕事をしよう。


  他にも店員は居るけど、あんまり話さないし話しかけられない。

  僕は自分に自信がないわけではない。髪の毛だってちょっと長いかもしれないけど、清潔だし背だって高い。177cm...高いよね?顔は普通の何処にでも居そうな顔って言われてます。


  「優、本棚整理終わったよ」


  「ごめん隆一りゅういちいつもやらせてばっかりで」


  小泉こいずみ 隆一りゅういちは唯一の男友達で、カッコよくてスポーツ万能。頭は良くないけど、優しいところはあるから信頼もしてる。

  容姿はというと髪の毛は短く、ザ・スポーツマンといったところで、身長が183と高すぎる。それでカッコいいとか僕が引き立て役みたいじゃないか。

  ちなみに隆一は僕のこと優の呼ぶ。


  「お前は本上さんどうにかしろよ」


  「やっぱりどうにかしないといけないよね?」


  「お前バイトリーダーなんだから。あれで金貰ってるとか俺達なんかバカみたいなじゃないか?」


  「まぁありきたりな意見だけど確かにそうだな。でも隆一も毎回見てるだろうけど言うこと聞かないんだよ?」


  お客さんが居ないからとレジの前で話していると、本上さんが動く。

  珍しいことではなく、本を読み終えると次の本に移行する。

  次は何を読むつもりだろう。


  「サスペンスの後はファンタジーか」


  「僕もファンタジー好きだな」


  本上さんはまた隅っこに座る。

  本上さん家でも隅っこで本を読んでそうだな。

  お客さんが来たと言うことで皆仕事に戻る。僕も仕事しよ、まぁレジなんだけどね。


 

  やっと閉店の時刻。レジの集計は地獄。

  韻を踏んでる場合ではない。流行りらしいけどそこまで感心して観てはいないから。凄いとは思うけど。

 

  「閉店です!」


  店員に声をかけそれぞれの持ち場のあと仕事をする。

  もちろん高校生は帰らせます。

  僕は大学生ということもあり、閉店後も最後まで仕事たっぷり。


  「お疲れ様でした!」


  次々に帰っていく高校生。それに仕事が早い人もあがっていく。

 

  「俺も先に帰るぞ?」


  「お疲れい!ランニングバッグってことはまた走って帰るの?」


  「まぁな試合も近いし頑張らないと!試合の時は休むから本棚整理は任せた!」


  「隆一が居ないときは僕がやってるんだからね?」


  笑いながら帰る隆一を見送り、仕事に取り掛かる。


  やっと終わって時刻は23,30。帰って飯食べて風呂入って歯を磨くを行うとなんと!寝るのは1時くらい、それに起きるのは朝の7時という個人的には厳しい睡眠時間。

  早く帰ろ。あ、忘れるところだった。


  「本上さーん?お店閉めますのでそろそろいいですか?」


  「もう時間なのかい?」


  「その言い方だとその本にまた影響受けたね?」


  「いいじゃん。お疲れ様でした!」


  耳にくるうるささだ。そんな怒らなくてもいいのに。


  外に出るとクーラーがついていた店と比べて寒暖差が物凄いことになっていた。

  暑いながらもドアの鍵を閉め、シャッターを下げる。

  横を見ると街灯の下、自転車の後輪を見ている本上さん。


  「どうしたの?」


  思わず声をかけてしまう。


  「パンクしてる...」


  なんと、神は本上さんに罰を与えたのかなんて下らないことを考えてないで。


  「家まで送るよ。危ないから」


  「えぇ...」


  嫌そうな顔が可愛いけど腹立つ。


  「安心してください、変な意味はまったくないので」


  「不審者以上のことをしてきそうなんですが?」


  「不審者以上ってなに!?なにをするの!?」


  くそぅ、そんな変態に思われてたのか凄いショック。

  何はともあれ本上さん可愛いし本当に危ないから送ってかないと。


  「あのね?この辺で...」


  怪談話をするかのような言い方をする。


  「この辺でなに?」


  いいぞぉ結構怖がっている。でも続きが思い付かない。


  「この辺で腹から◯を出して、自分で自分の頭を持った幽霊が出るらしいよ!」


  バカ野郎!楽しそうに話してどうする僕!完璧に変態じゃないか。


  「...って」


  「へ?」


  「だから!家まで送ってって!」


  涙を浮かべてるところは恋愛小説読んでた時以来だ。正直本当に抱き締めそう。

  ともあれ原付バイクを押しながら家まで送ることになりました。

  本上さんの弱点は珍しいから覚えておこう。

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