8話 相談しました
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あの出来事の日から、次の日も、また次の日も、そのまた次の日もアルと顔を合わせない日々が続いた。
そして今朝も、普段の様にテーブルに朝食が作られて置いてあったが、その作り手が見つからなかった。
家には帰ってきてるみたいだが、一体いつ帰ってきているのかは分からない。
「やっぱり、会いずらいわよね……」
私自身もアルとどう顔を合わせたら良いのか分からなかった。
「どうしてこうなっちゃたかなぁ」
居間のソファーに埋まりクッションをポスポスと叩きながら私はぼやく。
「これで死亡フラグが立ってたらどうしよう……」
違う……、違うでしょ私のバカ! それよりももっと思うところがあるのに。
「どうして思っていることと違う言葉でちゃうかなぁ……」
どうしてアルに会えないのがこんなに辛いのだろう。今までアルが遠出の任務に行って暫く会えないことがあっても、こんな胸が苦しくなるようなことなんてなかった。
きっとミリーの所にいるのは確かなのだが、それを思うと黒い物が内に渦巻く。
「私……おかしくなっちゃったのかしら。何でディアナの気持ちが理解できるんだろ……」
ゲームのディアナは、確かに冷酷残忍で人を人とも思わずアルに対しての扱いも酷かったけれど、所有物として自分の傍に置き、ミリーに対して怒り狂うほどの依存と強い執着心は、アルにまるで恋慕を抱ているようだ。
とは言っても、ゲームのディアナ程恋愛に程遠い人間はいない。彼女自身が恋や愛を否定していたのだから。
ゲームでのディアナは「私の所有物が生意気に人を好きなるなんて、なんて烏滸がましいのかしら。身の程を知りなさい。あんたに関わったことでこの阿婆擦れ女が死ぬことになったのよ? これに懲りて恋だの愛だの馬鹿げた不確かな気持ちは忘れなさい」と言ってミリーの死を悲しむアルに止めを刺していた。
「でもそれじゃあ私がアルに対して恋してるみたいじゃない」
それは、ない。きっとない。そんなことあってはいけない。
アルとの年齢差は7歳。それに前世の年齢を加えたら24歳差だ。最早親子といってもいいほどだ。
それでは殆ど犯罪といってもいい。美少年に手を出すおばさん、なんて悲惨な光景だろう。
それとも私はアルに対して、ディアナのように所有物としての独占欲を抱いているのだろうか。
自分でも気づかないうちに依存していたのかもしれない。アルみたいに師匠に健気に尽くす人間も少ない。私自身もアルに頼り切っている所もあった。
「それなら私最低だ……。アルは私のモノじゃないのに」
それにアルの心を傷つけてしまった。去り際、とても痛そうな顔をしていた。アルを守るはずの私が、彼を傷つけてしまうなんて……。
アルの心を救って守る。そう心に誓っていたのに。
「大切な人を守るのって、案外難しいのね」
今まで数えきれないほどの命を助けてきた。数えきれないほどの感謝と称賛を受けてきた。私自身守れない物なんてないって思っていた。
「銀色の乙女と謳われる私がこの為体。私もまだまだね」
アルに会ったらすぐに謝ろう。理由は未だ分からないが、彼を傷つけたのは確かだ。
一旦落ち着こうと思い紅茶をいれる。今回は砂糖を匙で4回いれたっぷりとミルクを入れる。疲れた時にはこれが一番だ。
「でもやっぱりアルの淹れてくれた紅茶の方が美味しいわ」
息をついていると、玄関のベルが鳴った。
気配を探ってその正体が誰だかすぐに分かった。訪れた人物は私の返事を待たずにずかずかと入ってきて陽気に私の前に現れた。
「ようディアナ。ん? どうした? 女神のような顔が愁いに満ちすぎて半端ない色気をはなっているんだが」
突然訪れた人物・ルークは、誘ってるのかとまで言い出し私は睨み付ける。
いつも以上の凄みだったのだろう、すぐさまルークは顔を青くして「すまん!」と頭を下げて謝罪した。
落ち着いた所で、ルークは私の向かい側に座った。
「それで、どうしたんだ?」
ルークに相談して解決する者かは分からないが、藁にでもすがる思いで話すことにした。
アルと私に起きた話しを静かに聞いていたルークだったが、聞き終えたと同時に「はぁ~」と思い溜息を吐いた。
「ディアナ、それは君が悪いな」
「うっ……。やっぱり?」
思わず縮こまりながらルークをみると、深く頷いていた。
「ディアナは男心がよくわかっていない。俺もアルと同じ年頃にそんな事言われたら同じこと、いや、それ以上のことをしていたかもな。まぁ今の俺は散々鍛えられたから理性でなんとか押し込めてやっとか? アルは良く耐えたと思うぞ」
「? よく分からないけれど、私はアルに対して酷なことをしてしまったのかしら?」
「……そうだな。それはもう大ダメージだった思うぞ。いつもは俺がアル同情される立場だったが、俺がアルに同情する日がくるなんてな」
そう言ってルークは苦笑した。
「どこが悪かったのか教えてほしいわ。私アルにあったら謝りたいんだけど……どこが悪かったかもわからないのに謝るなんて失礼じゃない。だから教えて!」
「駄目だ」
「何で!?」
私が前に詰め寄るとルークは苦笑した。その表情がアルと重なったのは気の所為……よね?
私が訝し気に見ていると、すぐにルークは何か一物をもったような表情をしてニタリと口の端を上げた。
「これはディアナ自身で気付かなきゃいけないものだ。俺自身もディアナに教えたくない」
私がしょんぼりとしていると、「だが」と言葉を続けた。
「少しだけ俺も手を貸してやる。ということで早速アル坊探して話してくる」
「アルが何処にいるのかわかるの?」
「まぁ、男同士だから大体当てはある。ここから男同士のことだからディアナはついて来るなよ? アルの名誉のためにも」
「……よく分からないけど、分かったわ。今日は大人しく家にいるわ」
そう答えると、ルークは柔らかい笑みを浮かべて「良い子だ」と言って私の頭を撫ぜた。
思わず照れてそっぽを向く私を見てルークは楽し気に笑ったあと、「行ってくる」と言って家を出た。
殆どルーク任せだけどここは彼に任せた方が良いのかもしれない。
少しでも良い結果になればいいのだけれど。
この寂しい気持ちがすぐに終わるように私は祈った。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ここでディアナの複雑な葛藤なんかを感じてくだされば幸いです。
ルークも案外いい奴なんですよね。大人な分アルよりも余裕があります。
これでアルとくっつくのかと言われると、実はそうじゃありません。
二人がくっつくのはまだまだ先です(え
これかも続きを楽しいにしてくださるとうれしいです!
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