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6話 成長しました

ブックマークありがとうございます。

これを励みに頑張ります!

 アルを弟子にしてから、4年の月日が経った。


 アルは私の鍛錬の甲斐もあり、初めて出会ったか弱い少年から頼りになる逞しい美青年へと成長した。年齢的には少年なのだろうが、大人びていているため誰も違和感を抱かないだろう。それに160はある私の身長をゆうに超して私の頭はアルの胸ほどまでだ。



 程よく綺麗に付いた筋肉は付きすぎずバランスが取れている。まさに理想の細マッチョ。声も大人の物へと変わり程よい低さ耳に心地良い。



 髪も伸び、長くなった髪は首元で緩く三つ編みにして編まれている。


 人になれたアルの表情は酷く穏やかでいつも笑みを浮かべ、ゲームの様に腹黒さを醸し出しだしながらも、町の娘たちを虜にし黄色い声が上がるほどの紳士になった。そして、相変わらず私にとっての自慢の弟子で健気な姿に心打たれるものがあった。



 ルークとの小競り合いは最早日常の風景と化し、ゲームとは違った平穏さに思わず笑みをこぼしてしまう。時々二人の言い合いが行き過ぎるのが玉に瑕だが。



 街中でもそうなる時があるため、町でもある意味名物になっていた。最近はアルの腹黒さと周りに繕う笑みはさらに恐ろしさが増し、ルークも顔を引きつらせる時があるのだから、子どもの成長は本当に早い。



 もうゲームの根本ともなるアルの魔王化まで2年しかない。多分このまま平穏に暮らしていればアルの魔王化は起きないだろう。そう、何も起きなければ。



 でもまだフラグを回収し終えたわけでも折れたわけでもない。もしかしたら、ゲームとは違った道筋を通ったことで魔王化が早まるかもしれない。



 私自身なんの対策も練らなかったわけではない。



 魔王化を防ぐことが第一なのだが、ゲームがある程度崩壊した今はどのタイミングになるか分からない。


 魔王化している最中も止めることもできないため、最善なのは魔王化の最中とその後の被害をどれだけ最小限にとどめるかという事だった。



 私はアルのみに効く強力な結界を何重にもかけた。ここ数年分魔力を魔石という魔力を保存できるものに枯渇寸前になるまで注ぎ込んだ。


 伝説級レジェンドどころか神級道具ゴッズアイテムを超越する世界にすら干渉することが可能な世界級ワールズアイテムになっていることは確かだ。



 魔王と言えでも世界で起きる事象にすぎないため、その世界に干渉できるほどの力で作られた物であれば魔王の力を外部には漏らせないはずだ。



 その石はネックレスとピアスにし、アルには肌身離さないように言いつけている。そのため、彼の両耳には雫の形をした紅い石と胸元にはまるで星空のような丸い石が飾られている。



 だからきっと大丈夫なはずだ。後は魔王化した時でないと分からない。



 2年後は要注意という事で後は考えるのはやめよう。これ以上考えても煮詰まるだけだ。


 気分転換をしようと私は町に繰り出した。今日は珍しくアルが単独でどこかへ出かけたので暇だった。



 アルのことだから鍛錬と称してどこかの魔獣を狩に行っているのだろう。私が教えられることは大体教えたため、後は熟練度を増すだけだ。



 いつもはポーションや魔道具を売ったり、ギルドの依頼を受けたり、時々必要な食料を買うだけでゆっくりとウィンドウショッピングをすることはほとんどなかった。



 洋服も実家から届くし時々ルークからもアルが分からないようにくれる時もある。本来異性から洋服などを送られた場合は求婚や交際を求めているという印なのだが、相手がルークなため何も気負う必要性を感じなった。



 そんな私をみてルークが落胆した表情をしていることなど知る由もない。




 最近は色んなものが流通して居るようで、懐かしいものまで見つけた。



「味噌と醤油だ……! それに米もあるわ!」



 異世界で前世の母国の食品に出会えるなんて思いもしなかった。



「おや、ブラッドフォール様。お目が高いですね。これは海を越えた最果てにあるヤマトと呼ばれる国のものでして、茶色いのがミィソ、黒い液体は調味料らしくてショウと言って、そのツブツブした薄茶色の物はコメというものでヤマトの国では主食だそうです。最近貿易も可能になり流通するようになったんですよ」



 お店のおじさんが陽気に教えてくれる。発音は難しいのかそれともそれが正式名なのか分からないがどうやら米以外は名前が違うみたいだ。



「早速買わせてもらおうかしら。ミィソを2キロ、ショウも2瓶、コメは30キロお願い」



「こんなに沢山買ってもらえるのはありがてぇですがブラッドフォール様では重すぎて持てないのでは? 傍にはアル坊もいねぇみたいですし」



「あぁ、問題ないわ。アイテムボックスがあるから」



「あぁ、ブラッドフォール様が発明した魔法ですね。流石銀色の乙女と名高いお方だ。あ、お買い上げのお礼にサービスしますね」



 そう言った気前のいいおじさんは今日出来たばかりだろ言うブルーベリーのジャムを大きい瓶一つをくれた。ブルーベリーが好きな私としては僥倖だっため、満面の笑みを浮かべる。



「ありがとうおじさん。また買いに来るかもしれないからよろしくね」



 思わぬ出費だったが全く痛くない。寧ろほくほくだ。


 気分よく商店街を歩いていると、見慣れた姿を見掛け声を掛けようとして踏みとどまった。



「あれは……アルと……ミリー?」



 いつの間に二人は知り合ったのだろう。いや、知り合っていてもおかしくはないのだ。



 アルと共にいるミリーは、ハニーブラウンのフワフワとした長い髪に綺麗な翡翠のような目をした美少女だ。



 そして、ゲームでのアル初恋の人でもある。


 孤独と闇に捕らわれ、ディアナによる苦しみの日常に差し込んだ暖かな太陽みたいな存在。ヒロインが似ていると言われてきただけあり、ヒロインと瓜二つの美しいかんばせ



 どうやら二人は談笑をしているようだが、その場に踏み込むことを何故か躊躇わされた。何も不味い事なんてしていないのになぜだろう?



 アルが普段見せたことのない極上な笑みを浮かべてることになんで胸が苦しいのだろう?



「私、子離れできていないのかしら……」



 何故だか二人の姿を見ていることができず、その場を静かに去ることにした。



 アルがあんな表情をしているなんて、きっとミリーに恋をしているに違いない。ゲームで彼が彼女に心を奪われた様に。



「ここは死亡フラグの回避の一つとしてアルを応援すべき……よね」



 例え報われないものだとしても。そのことにどこか安堵をしていることに気が付かずに、私は移転の術で家に帰った。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

鈍すぎる主人公にイライラしませんでした?

やっと恋愛物らしくなったような気がします。

これからもよろしくお願いします。

アドバイスや誤字脱字報告がありましたらお気軽にどうぞ!


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