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2話 師匠になりました

早速続きです。

早速ブックマークありがとうございます。

 魔王になる少年ことアルファルドを客間のベットに寝かせて、私はすぐさま様態を診た。アルファルドの傷は然程大きい物ではなかったが、小さい傷が数えきれないほど多くとても痛々しい。



治癒キュア体力回復ヒール



 これで傷を完治し、体を動かせる程度には体力は回復できただろう。しかし血液など失われた物、体に必要な足りない物は補えない。


 そして傷よりも大きな問題があった。それはアルファルドの健康状態だ。傷を見るために服を脱がせた際、彼の体を見て傷の多さよりも骨が浮き上がるほどやせ細っていることに私は驚いた。


 具合が悪くて顔が青ざめていたのは分かっていたが、これを目の当たりにして原因が栄養不足だとすぐに理解する。



 きっと満足に食事をとることが出来なかったのだろう。


 ゲームでのアルファルドは、ゲームのディアナに弟子ということでペットとして飼われ酷い仕打ちを受けていたが、それ以前にもディアナ程でないにしろ人として扱われず蔑ろにされていた。



 と言うのも、今は殆ど廃れてしまった迷信なのだが、黒髪紅目の子どもは魔王になると言われていたのだ。



 ある意味真実であるが、その子どもが魔王になってしまう原因は周囲の人間、特に最も身近な親族だ。


 アルファルドが典型的な例だ。その迷信を極僅かに信じている者もおり、そういった人間が集まっていた村に生まれたのがアルファルドだった。当然その村の人々は勿論、親や兄弟にアルファルドは魔王になると畏れられながらも虐げられたのだ。


 もともと黒髪紅目の人間の多くが魔力が桁違いにある。そこに精神的な負荷や肉体的な負荷が重なり臨界点が突破し不安定なった膨大な魔力が爆発すると、闇に堕ちてしまうのである。


 闇に堕ちた者は初め怨念に思考が奪われ、破壊衝動と殺戮衝動に互い周囲を滅ぼす。これが魔王化と呼ばれるものだ。


 周囲を破壊しつくすと大分落ち着き、今度は魔獣などを従える能力を手にして最終的には世界を滅ぼす。これが魔王になってしまった者の業なのである。魔王になったものは、大抵こうなるらしい。例外で静かに魔王化し恨みのある者だけを殺してすぐに人間に戻ったものもいるらしいが、本当に稀な事だ。



 できればアルファルドにはそんな道を辿って欲しくはないが、ゲームにとって主要な彼が魔王にならなくてもいいのだろうか?



 出来る事なら、魔王にならないでほしい。私の死亡フラグを回避するためにも。



 しかしこのことによって世界のバランスが崩れたら? もしこれで世界が滅びるなんてことになったら私の死亡フラグどころではない。世界諸共ジ・エンドだ。



 それでは出来るだけ安全に魔王化するように配慮をするべきだろうか? 安全な魔王化がどんなものかも知らない上にそんなことが出来るかどうかも怪しいが。



 今はそんなことを考えても答えには辿り着けないだろう。それならば私は……。



「取り合えずこの子が独り立ちできるようにビシバシ鍛えて当たり前の幸せを得られるようにするしかないわね。私弟子なんか頼まれても作らなかったんだから、感謝しないさいよ、未来の魔王様。私、厳しんだから覚悟してよね」



 私にできることは彼の師匠として、保護者としての愛情を注ぐこと。この歳で子どもを持つことになるなど考えもしなかった。転生してからの年齢は17だが、前世の分も含めれば三十路。子ども一人いても可笑しくはないが、心境は複雑だ。傍から見たら親子や師弟関係というよりも姉弟に見えるだろう。



 アルファルドはゲームの知識によると大体10歳くらいだろう。食生活が悪劣だっため通常の10歳の子どもよりも小柄だが、私がこれからずっと十分食事を与えるのでその心配は無用だ。子どもは回復力も高いからすぐに回復することだろう。



 衣服を綺麗なパジャマに着替えさせたため後は大丈夫だろう。身に着けていた衣服はボロボロで、着ることは出来ないだろうが無断で捨てるのは躊躇われるので取りあえず取っておくことにした。



 水を張っていた桶に手拭いを入れ、絞ったもので少し汚れていたアルファルド顔をぬぐっていると、彼の瞼が僅かに震えた。



「うっ……、ケホッケホッ」



 声を出そうとするもかなり喉が渇いているのかむせ出すアルファルドに、私は上半身を起こさせてから優しく背中を撫で、コップを彼の口元に寄せ水を飲ませると「ありがとうございます」というか細い声が聞こえた。



「傷の具合と体調はどう? 少年」



 アルファルドは虚ろな目で私を見ると、どこか怪訝な顔をする。


「貴女は……一体……。何故僕なんかを、助けてくれたんですか……」



 いくら将来の魔王と言えどもまだ子ども。弱弱しい姿にゲームの彼とのギャップに笑いが零れそうになると同時に胸が痛む。



 アルファルドは虐げられることが当たり前になっており、それが自分の普通の扱われ方だと思っているのだろう。



 彼が本当に絶望するのは、優しさに触れ心を取り戻してからだ。惨いことをゲームのディアナはしていた。



 あんなゲームのようなことは私には出来ない。出来てもやりたくない。



 彼の不安が隠れる眼差しを私は真っ直ぐ、しかし優しい眼差しで見つめる。



「私の名はディアナ・ブラッドフォール。銀色の乙女や剣聖、賢姫と呼ばれている者よ。そして、少年の師匠でもある」



「師匠、ですか?」



 訝しむ彼をよそに私は言葉をつづける。



「そう、少年は今から私の弟子になったわ。体調の回復次第ですぐに鍛錬を始めるわ。私の生きるためのありとあらゆる知識と戦う術を少年に教えてあげる。少年が独り立ちできるまでね」



「でも……僕なんか……」



「自信を持ちなさい。少年はこのディアナ・ブラッドフォールの唯一無二の弟子なのよ? 今まで弟子入りを断ってきた私が弟子を取るなんてそうそうない事よ。少年には私の教えを教授するだけの器も才能もあるんだから。胸張って喜ぶところなんだからね」



 私が笑みを浮かべると、アルファルドは照れたようにして顔を俯かせた。



「少年の名前は何て言うの?」



「アルファルド、です」



 アルファルド、前世の外国の言葉では孤独な者を意味する。彼が孤独にならず幸多からん事を祈るばかりだ。



「そう、アルファルドなら……アルと呼ぼうかしら。私の事は師匠と呼んでね。これからよろしくね、アル」



「はい、よろしくお願いします。師匠」



 慣れない笑みを浮かべたアルの顔は少し引きつっていたが、私も微笑み返す。


 私の死亡フラグを折りつつ、彼の師匠を頑張るとしよう。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

何処か分かりにくい所とかなかったですかね。

というかコレ短く終われるのか?

大体の結末は既に決まっていますが……不安定ですね。

ブックマークをしてくださった方々、本当にありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

誤字脱字報告やコメント、アドバイスなどお気軽にどうぞ。

20151015誤字等を修正しました。

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