表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ぼくはこれから海へ行くのだ

作者: ライム

海・夏・恋の三拍子です。これは作者が同性の友人と鉛色の海へ行く途中ささくれた気持ちで書いた短編小説です

 朝、6時42分。ぼくは悠々と電車に揺られていた。


 思ったよりも人数の多いよれたシャツを身につけたお父さんたちがくたびれた顔をしてぼくと同じ揺れる鉄の棺桶に押し込められている。


 いつもならぼくも似たような顔をして手すり革に掴まっているんだろうけど今日は違う。今日ばかりは、見慣れた眠たげな表情のおじさんたちはぼくにとってステイタスだった。


 なんせ、彼らとぼくとの共通点は右手に一つのかばんを抱えていること。


 違いは彼らは仕事用のシャツを着ているのに対し、ぼくはラフ&カジュアルな格好をしている。


 さらにかばんの中身といえば昨日買ったばかりの水着と日焼け止めと大きなタオル。


 そう! ぼくはこれから海へ行くんだ。


 これからぼくはこの電車を降りて、さらに乗り換えをした駅で待っているエリカと待ち合わせて日本海側の優美な海へ行くのだ。


 日付は8月の頭。低気圧はすでに消え去り、生きたビニール袋が海面に君臨するのもまだ先の話だろう。


 エリカというのは、大学で知り合った二つ上のイギリスからの留学生だ。


 年上であることを感じさせない彼女はまるで小動物のようだ。


 さぁ、乗り換えの駅に着いた。


 本当の人並みに飲まれるのはここからだ。


 ぼくは働きに行くお父さんや、部活動に勤しむ高校生を尻目に泰然と市営鉄道からJRの駅へ歩んだ。


 気分はロマンス映画の主人公だ。テープはまだ冒頭。これからぼくとエリカとの、真夏のaventureが繰り広げられるのだ。


 きっと、120分では収まらない。


 ぼくが駅のホームに立ち止まるよりも先に、色黒ノッポの洒落た革靴を履いたサラリーマンが立ち止まった。


 身長は平均あるだけのぼくはノッポには劣等感を抱くのが常なのだけれど、今日ばかりは、そんな過去に鼻を鳴らした。


 ぼくはこれから海へ行くのだ! 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ