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第35話 ダンジョン探索と休憩と

 ダンジョンにはいった俺たちは、LEDランタン片手に探索をはじめた。

 先頭を歩くのはもちろん、加入したばかりのミャーちゃん。


「みんなはミャムミャムのあとについてくるにゃ」


 ミャーちゃんは耳をピクピク、鼻をヒクヒク、獣人の特性を目いっぱい発揮して進む。

 このダンジョンのどこかにコボルトの巣があるというライラさんの読みは的中したのか、通路を進むとたまにコボルトが現れたけど――


「足音が聞こえるにゃ。たぶんコボルトー」


「マサキさまっ、わたしにお任せください!」


 遭遇前にミャーちゃんが警告をし、通路の曲がり角からとび出してきたコボルトをキエルさんが矢で射抜く。

 息ピッタンコなコンビネーションのおかげで、俺たちは戦闘らしい戦闘もせず、ダンジョンをずんずん進むことができた。


「ふにぃー……。にゃーんか、この階にトラップはなさそーだにゃあ」

「お、マジですか?」

「うん。にゃんかねー、変なとこも気になるとこもにゃいんだよねー」


「おー、ミャーちゃんの『勘』ってやつですか?」

「うん! ミャムミャムのかんっ!」


 どうしよう、あっさり断言されちゃった。

 ミャーちゃんの腕を疑うわけじゃないけれど、パーティみんなの命が個人の『勘』にかかってるのは、ちょっこす心配だぜ。


「マサキ、そんな心配そうな顔しなくても大丈夫さね」

「ライラさん……」


「いいかい? 冒険者にとって『勘』ってやつはね、経験からくる立派な才能のひとつなのさ。ミャムミャムはソロ(単独)の冒険者として今日までやってきてんだ。信頼してみようじゃないか」


 ミャーちゃんの背中を見つめるライラさんの顔は、どこか楽しそうだった。


「マサキ、姉さんがミャムミャムを信用するなら、あたしも信するわ」


 ロザミィさんは人差し指をぴんと立てると、続けて独自の見解を述べはじめた。


「それにもしこの階にトラップ()があるのなら、あたしたちより先にコボルトが引っかかっていると思わない?」

「あー! 確かにそうですね!」


 コボルトの知能はそれほど高くはないらしい。であるならば、うっかりなにかを踏み抜いてトラップを発動させちゃっていてもおかしくはないよな。

 それがないってことは、ミャーちゃんの『勘』の正しさを表していることになる。


「でしょ? きっとこのダンジョン(遺跡)のどこかにコボルトの巣があるはずよ。なのに、トラップにかかった形跡はない」

「つまり、少なくともこのあたりにトラップはない、ということですね?」

「そうゆうこと」


「おー! それはラッキー(運がいい)ですね!」

「マサキさまの日頃の行いが素晴らしいからですよ、きっと」

「やだなー、そんなことないですってー」


 キエルさんに持ち上げられ、若干照れてしまう俺。

 そんな俺たちを見て、ミャーちゃんが呟いた。


「みんな、仲がいーんだね」


 その言葉があんまりにも嬉しくって思わず得意げな顔をしてしまった俺は、


「俺はミャーちゃんとも仲良くなるつもりですよ!」


 と言ったところ、なぜかロザミィさんからガチ目の肘打ちを頂戴するのでした。



 ◇◆◇◆◇


 

 ダンジョン探索は順調に進んだ。

 下の階へとつながる階段を見つけてはマッピングし、警戒しながら下りていく。


 襲いかかってくるコボルトをバッタバッタとなぎ倒しながらフロアをまんべんなく探索し、見つけた階段でまた下へ。

 そんなことを3回ぐらい繰り返したところで、俺たちはがっつり休憩をとることにした。


「ふにゃ~。疲れたにゃーん」


 ミャーちゃんはペタンと座り込むと、大きく伸びをする。

 パーティの先頭に立ち、索敵に罠の発見と、ずーっと神経を研ぎ澄ましていたんだろうな。

 かなりお疲れちゃんなご様子だ。


「ミャーちゃん、お疲れさまです」

「おにーさんありがと。でも気にしないで。これがミャムミャムのしごと(役割)だからねー」

「気にしますって。だって、ミャーちゃんがいてくいれたからこそ、近づいてくるコボルトに対して先手を打ててるんですからね」


 俺の言葉にみんなが頷く。


「マサキの言う通りだよミャムミャム。アタイらだけじゃこうも簡単にここまで来れちゃいないよ」

「そうかにゃー? でもコボルトをほとんどやっつけてるのはキエルだよ?」

「ミャムミャムが接近前に教えてくれているから、わたしにも倒せているだけです」

「そうゆうことよ。悔しいけど、さすがは『青銅等級』の冒険者だわ」


 みんなべた褒めだ。

 ミャーちゃんも嬉しかったのか、恥ずかしそうにほっぺをかいている。


「みんなミャーちゃんに感謝してるんですよ。あ、これよかったら食べてください」


 俺はブロックタイプの栄養補助食品をミャーちゃんに差し出す。

 ミャーちゃんはすんすんと臭いを嗅ぎながらも、


「ありがとー」


 と言って受け取ってくれた。


「みんなの分もありますよ。いっぱい持ってきてるんで、好きなだけ食べてください」


 俺は2丁目界隈で最近『ホモバッグ』と呼ばれているらしいバックパックから、ブロックタイプの栄養補助食品を取り出す。

 好みもあるだろうから、近所のドラックストアでいろんなメーカーのものを買い揃えてきた。


「これがチョコレート味で、これがアップルで、こっちがレーズンです」

「マサキさま、これは携帯食料ですか?」

「みたいなものです。キエルさんにはこのフルーツがどっさり入ったクッキーサンドがおすすめですよ」


「ありがとうございます。では、それをいただきますね」

「どーぞどーぞ。あ、ロザミィさんは――」

「ちょこれーとっ! ちょこれーと食べたい!!」

「ですよねー。はい、どーぞ」

「ありがとマサキ!」


 食い気味にチョコレートを要求するロザミィさん。

 異世界こっちじゃ固形のチョコレートは存在していないそうで、ロザミィさんとリリアちゃんは錦糸町で食べたチョコレートが大好きなのだった。


「ライラさんはなににします?」

「そうだねぇ……。ふむ」


 ライラさんは、いまいち食指が動かないみたいだな。

 これはひょっとして……


「あれ? ライラさん甘いの苦手でした?」

「……当たりだよ。甘いものは酒に合わないから、どうしても……ねぇ?」


 食べ物の好みがお酒基準だなんて、実にライラさんらしいな。

 ちょっと微笑ましいぜ。


「だったら干し肉にします? とっておきの持ってきたんですよ」

「……あるのかい?」

「もちろん!」


 俺はドヤ顔でビーフジャーキーを取り出す。

 このハワイ土産として一世を風靡したビーフジャーキーは、いまでもビールのお供として欠かせない俺の秘蔵っ子だ。


「うまい! この干し肉うまいじゃないかっ!!」

「ふっふっふ、100グラム1000円は伊達じゃないですからね」

「独特の風味がいいね。これどこで売ってんだい?」

「……ひ、秘密です」


 こんな感じでお腹を満たしつつ交代で仮眠をとり、さーて、そろそろ探索を再開しようとした矢先。


『ウワォォォォオオオオオオオオンンッ!!』


 ダンジョン全体に震わせるほどの、力強い遠吠えが聞こえてきたのだった。

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