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第34話 再びダンジョンへ

「ミャムミャム、この3人がアタイの連れだ。紹介するよ」

「うんっ」


 ライラさんはそう言うと、俺たちのことを順番に紹介しはじめた。


「この子がロザミィ、ヒーラー(治癒師)をやってるからケガしたら頼むといいよ」

「よろしくね、ミャムミャム」

「うんっ、ヨロシクにゃロザミィ!」


「こっちのエルフはキエル。精霊魔法と弓が得意だよ」

「はじめましてミャムミャム。キエルと申します」

「にゃわーっ。エルフにゃエルフっ。ミャムミャムはエルフに会うのひさしぶりにゃー」

「あ……み、耳に触らないでください」

「えー? いーじゃんいーじゃん。へるもんじゃにゃいしー」

「あ、ちょっ……」


 俺の登場を待たずに、ミャムミャムさんがキエルさんといちゃつきはじめてしまった。

 おっさんてば、ちょっとだけ哀しいよ。


「ミャムミャム、まだ終わってないよ」

「にゃははっ、ごめんごめん」


 やっと俺の番が回ってきた。

 俺は一歩前に出て右手を伸ばす。


「はじめましてミャムミャムさん。俺は正樹っていいます。このパーティでは魔法戦士っぽいことしてます」


 ミャムミャムさんに自己紹介して、握手を求める。


「ヨロシクねおにーさんっ。ミャムミャムだよっ」

「こちらこそよろしくお願いしますね」


 ミャムミャムさんは俺の手をぎゅっと強く握ってきた。

 なんか底抜けに元気なひとだなー。

 一緒にいるだけで楽しくなっちゃう、ムードメーカータイプだ。


「ミャムミャムさんは盗賊シーフなんですよね?」

「んとねー、盗賊ってわけじゃにゃいんだけどねー。昔いっしょにパーティ組んでたエルピノから盗賊としてのスキル(技術)をおしえてもらったんだー」

「へー、そうなんですか。でも教えてもらった技術をしっかり自分のものにできてるなんてすごいですよ!」

「ありがとっ。おにーさんも魔法戦士なんてすごいんだにゃ!」

「そんなことないですよ。どっちも中途半端なだけなんですから。独り立ちしているミャムミャムさんの方がすごいですって。俺はひとの助けを借りてばっかですからねー」

「そんなことにゃいと思うんだけどにゃー。あ、それよりもおにーさん、」


 ミャムミャムさんは一度言葉を句切ると、上目づかいに俺を見あげる。


「ミャムミャムのことはミャムミャムって呼んで。『さん』はいらないのにゃ」

「えー、呼び捨てですかー?」

「これから一緒にぼーけん(冒険)する仲間なんだからとーぜんにゃっ。呼びにくかったら『ミャー』でもいいにゃ。昔の仲間がミャムミャムのことそう呼んでたんだー」


 なるほどなるどな。ミャムミャムさんは、おフランクな関係をお望みなわけですか。

 OK。ならその想いに応えてあげちゃうのが、人生の先輩パイセンであるおっさんの務めだよね。


「わかりました。なら『ミャーちゃん』て呼ばせてもらいますね」

「うんっ」

「キエル……いまの聞いた?」

「……聞きました」


 なにやら俺の背後で、ロザミィさんとキエルさんがこしょこしょと密談をはじめた。


「あたしだってまだ『ロザミィさん(・・)』としか呼ばれてないのよ」

「わたしも『さん』づけでしか呼んでもらったことはありません。『ちゃん』をつけて呼んでもらっているのは――」

「お嬢ちゃんたちぐらいね……」

「はい。ソシエとリリアだけですね」

「…………」

「…………」

「キエル、こんどふたりだけで飲みにいきましょ」

「是非」


 背後で行われているこの会話に、どんな意味があるのかなんて俺にはわからないけど、なんかふたりには重要度が高いみたいだな。

 でも、飲みいくときは俺も誘って欲しいぜ。


「挨拶は済んだみたいだね。なら酒でも飲みながら今回の『仕事』について話を詰めようか。ミャムミャム、アンタ酒は飲めるのかい?」

「飲めるにゃ」

「せっかくですから場所を変えます?」

「そうね。姉さん、あたしたちの宿で飲みましょ」


 ここは冒険者ギルド。

 未発見で未踏破なダンジョンの話をしようものなら、誰がどこで聞き耳たててるかわからないもんね。


「そういうわけだ。ミャムミャム、アタイらの部屋で飲もうじゃないか」

「あ、俺美味しいお菓子もってきましたよ」

「いくにゃー!!」


 ってなわけで、俺たちは宿屋に移動して未踏破ダンジョンの説明がてら、深夜までミャーちゃんの歓迎会をするのだった。

 もちろん、朝方に複数のマーライオンが現れたことは言うまでもない。





 そしていま、俺たちはヨロシク勇気号に乗り爆走していた。

 ダンジョンのある森まで一本道。

 だからけっこースピードを出していた。


「にゃっはーーーーーー! この乗り物すごいにゃーーーーっ!!」


 助手席のミャーちゃんは、馬を必要としない乗り物()にずっと興奮しっぱなしだ。

 せっかくなのでミャーちゃんには助手席に座ってもらい、ヨロシク勇気号のすごさを体感してもらっている真っ最中。

 反応は上々。


 まー、出発前には恒例の助手席争奪戦があったんだけどね。

 そんでもって、後部シートの反応はというと。


「はやっ、はやいはやいはやいっ! まさ、マサキもっとゆっくり! ゆっくり走って!」

「ソシエ……ごめんね。姉さまはこんどこそ帰れないかもしれないわ……」

「なに言ってるのさふたりとも。これが楽しいじゃないか。マサキ、もっと飛ばしておくれっ」

「りょーかいです!」

「「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


 ヨロシク勇気号のスピードにロザミィさんとキエルさんが涙を浮かべれば、対照的にミャーちゃんとライラさんは目を爛々と輝かせている。

 大興奮するミャーちゃん。ヨロシク勇気号のスピードにスリルを感じるライラさん。さてはふたりとも、絶叫系の乗り物とか大好きなタイプだな?


 ぐいっとアクセルを踏み込み、ヨロシク勇気号が加速する(それでも時速60キロぐらい)。

 街道といっても、日本と違いアスファルトで舗装されているわけではないからけっこー揺れる。

 チラリとバックミラーを確認すれば、ロザミィさんとライラさんのお胸がドえらい勢いで揺れていた。


 ふたりとも後部シートでよかったと心底思う。もし助手席だったら、いろいろ気になって運転どころじゃなかっただろうからね。

 ちなみにキエルさんのお胸は慎ましく、ミャーちゃんのお胸は大平原なので、車内をどんな振動が襲おうとも微動だにしない。

 動かぬこと大平原の如しだ。


「おにーさん、こんな乗り物もってるなんてすごいのにゃ。ミャムミャムもほしー!」

「あはは、さ、さすがに車はプレゼントはできないかなー」

「ちえー。残念にゃー」

「マサキ前、前見て前! 木にぶつかるぅ!! きゃぁぁぁ――!!」

「おっとあぶない」

「ふう、いまのはなかなかよかったよマサキ。次はもっとギリギリを攻めてみようじゃないか」

「マサキ、ライラ姉さんの言葉は無視するのよ!」

「おやおや、つまらないねぇ」


 和気藹々といしながらもヨロシク勇気号は進んだ。時速五〇~六〇キロで街道を走ること20分ばかり。

 とばしたからか、ダンジョンのある森へ前回よりも早く到着した。


「各自荷物を持ってヨロシク勇気号から降りてください。キエルさん、また精霊魔法を使ってヨロシク勇気号を隠してもらっていいですか?」

「お任せください」


 ヨロシク勇気号を草木のモサモサで隠し、森の中へ。

 途中、何体かのモンスターと戦ってミャーちゃんとの連携を深める。

 そして――


「ミャーちゃん、この壁の先がダンジョンです」

「うんっ」

「みなさんも準備いいですね?」


 後ろを振り返ると、ロザミィさんは真剣に、ライラさんは楽しそうに、キエルさんは緊張した面持ちで頷いていた。


「じゃ、行きますよ!」


 俺はそう言い、裂け目を塞いでいたストーンウォールをひっこめる。


「いっくにゃー!」

「あ、待ってください」


 まずミャーちゃんが裂け目からダンジョンに飛びこみ、慌てて俺たちもその後に続くのだった。 

活動報告でミャムミャムのイラストを公開しています。

よかったら見にきてください。

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