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第30話 コボルトとの戦闘

 冒険者ギルド、『獅子の牙』でコボルト討伐依頼を受けた俺たちは、さっそく街道沿いの森に来ていた。

 歩くと6時間はかかる距離でも、ヨロシク勇気号を使えば30分もかからない。


「これは本当に楽でいいね!」


 とは、ライラさんのお言葉。

 確かにヨロシク勇気号を使えば、移動時間が大幅に短縮できちゃうもんね。

 徒歩や馬車での移動が基本な異世界こっちじゃ、ヨロシク勇気号の存在はチートもいいところだ。


「さーて、みなさん忘れ物はないですね?」


 俺の言葉に、全員が頷く。


「よーし! じゃあキエルさん、お願いしちゃいます!」

「はい」


 森の端っこにヨロシク勇気号を停め、キエルさんの精霊魔法で草をフサフサに伸ばしてもらい車体を隠す。

 まるでギリースーツだ。まさかこのフサフサした草の中に、ヨロシク勇気号()が隠れているとは思わないだろう。


「キエルさん、ありがとうございます。そんじゃみなさん、森に入りましょう!」


 こうして、俺たちはコボルトが大繁殖している森へと入っていくのだった。





「なるほどね。コボルトが好きそうな森じゃないか」


 ライラさんが呟く。

 その顔はコボルトとの戦闘を期待してか、どこか楽しそうだ。

 前から思ってたけど、ライラさんて戦いが大好きっぽいよね。バトルジャンキーってやつだ。


「そうなんですか?」

「ああ。見てごらんマサキ。木々の葉が重なってお天道様を隠しちまってるだろ? コボルトは薄暗い場所を好むからねぇ。この森はさぞ住み心地がいいんだろうさ」

「なるほど。本来は夜行性なんですよね?」

「そうよ」


 俺の質問に答えたのは、隣を歩くロザミィさん。


「マサキはコボルトと戦うのはじめてだったわよね?」

「ええ、いままでご縁がなかったのでそうなりますね」

「ズェーダじゃコボルトはあまりでないモンスターだからね。しかたないわよ。まあ、その代わりオークやゴブリンがいっぱいでるけど」


 ロザミィさんが肩をすくめる。

 オークにあまりいい思い出がないロザミィさんの、精一杯の皮肉なんだろう。


「ははは、やっぱり地域によってでてくるモンスターも違うんですねー」

「さっきギルドの受付に訊いたんだけど、この森にはコボルトの他にもいろんなモンスターがでるそうよ」

「他のモンスター……。ど、どんなのがいるんですか?」

「あたしが聞いた話だと――――……」


 俺とロザミィさんが『森の不愉快な仲間モンスターたち』のお話に花を咲かせていると、


「お話はそこまでだ。いたよ」


 ライラさんが低い声で警告を発した。


「……どこです?」

「あそこさ。見えるかい?」


 ライラさんが指さす先、そこには犬の頭部を持った人型のモンスター、コボルトがいた。

 数は10体。鼻をひくつかせ、周囲を探りながら歩いている。得物でも探しているのかな?


「風の精霊に頼んで、こちらをいま『風下』にしてもらっています。匂いで見つかることはありません」

「やるじゃないかキエル。さぁマサキ、キエルがここまでお膳立てしてくれたんだ。確実に仕留めるよ」

「ですね。んーじゃ、ハイブースト(上位肉体強化)ディフェンサー(防御力上昇)オートリカバリー(自動回復)


 みんなに補助魔法をかける。

 なんかライラさんもロザミィさんも複雑な顔をしてたけど、ちょっとしたミスが即死に繋がるんだ。

 安全策を取るに越したことはない。


「山盛り補助魔法をかけてもらえるアタイらは贅沢者だねぇ」

「ぼやかないでよ姉さん。それよりいきましょ? キエル、一緒に先制攻撃するわよ」

「わかりました」


 ロザミィさんがボウガン(mamazon(ママゾン)で購入したやつ)を、キエルさんが弓を構え、


「キエル、タイミングを合わせるわよ。いち、にの……さんっ」

「フッ」


 同時に矢を放つ。


『――ッ!?』


 キエルさんの矢はコボルトの頭部に突き刺さり、一撃で倒すことに成功。

 FPS界隈じゃおなじみのワンショットキルってやつだ。

 一方、ロザミィさんの矢は、


『キャインキャインッッッ!?』


 コボルトの横っ腹に命中。

 一撃で倒せないまでも、深い傷を負わせることができた。


「ごめんなさいマサキ……外しちゃった」

「なーに言ってんですか。ちゃんと命中してるじゃないですか」

「でも――」

「でも、はなしです。それよりも援護お願いしますね。ライラさん、いきましょ!」

「ああっ!!」


 俺は攻撃魔法をどごんどごんすっ飛ばしながら、コボルトに向かって駆けだす。

 肉体のスペックが高いライラさんは、俺をあっさりと追い抜いてもうコボルトの群れに飛びこんでいる。


「やああぁぁぁっ!!」


 バトルアクスが振り回されるたびにコボルトの絶叫があがり、血煙が舞う。

 盗賊団のみなさまと戦ったときは、かなり手加減していたんだろうな。

 遠慮なしに戦ういまのライラさん、めっちゃ強い。ひょっとしたらムロンさんよりも強いかもしれない。


「ライラさん、俺の分残しといてください、よっと!」


 やっと追いついた俺はライラさんと背中合わせに立ち死角を消す。

 この間にもびゅんびゅん矢が飛んできては、コボルトたちを地に伏せさせていた。


『グルルルルルゥ……』


 コボルトが唸り声をあげ、威嚇してきた。

 正直、モンスターとはいえ、モフモフしている生き物を殺めることには強い抵抗感ががある。

 しかーし、コボルトの被害にあったひとたちが、どんな凄惨な目に合うか知ってしまった以上、見過ごすわけにはいかない。


「いっくぞー!」


 俺はムロンさんとの特訓を思い出し、腰から抜いたブロードソードを正眼に構える。

 日々の努力の賜物か、はたまた補助魔法による効果なのか、どちらにせよ、俺の振るったブロードソードは一撃でコボルトを倒し、他のコボルトを大いに警戒させた。


「なかなかやるじゃないかマサキ。その調子だよ」

「おっす!!」


 ライラさんからお褒めの言葉を頂戴する。


「せっかくだ。アタイとどっちが多く倒せるか賭けをしようか?」

「…………え?」

「負けた方が、勝った方の言う事をいっこ聞くってのでどうだい?」

「……え?」

「決まりだ。じゃあ……勝負だよ!!」


 このあと、ライラさんは大いに張りきってしまい、加勢にきたコボルトの一団もほぼひとりで全滅させてしまうのだった。





「ふぃー。増援に次ぐ増援で、けっきょくかなりの数になりましたね」

「ホントよね。マサキの魔法がなかったら危なかったわ」

「俺だけじゃないですよ。ロザミィさんとキエルさんの援護射撃にはすっごい助けられましたからね。ありがとうございました」

「そ、そんなことないわよ。コレ(・・)、もあったしね」


 ロザミィさんがボウガンを掲げてポンポンと手で叩く。

 USAのゾンビなドラマの登場人物に影響を受けて、ついつい買っちゃったボウガンだけど、その使いやすさと命中精度はかなりのものらしい。

 武器職人でもあるライラさんが、真顔で悔しがってたほどだしね。


「それよりマサキ、なんか姉さんと賭けでもしてるみたいだったけど……なにを賭けたの?」

「わたしも気になります。マサキさま、ライラとなにを賭けていたのですか?」

「あ、あははは……。た、大したものじゃないですよ。きっと(・・・)ね」


 そもそも賭けに乗っかったつもりは、いっさいないんだけどなー。

 賭けについて、あとでライラさんときっちり話しとかないと。

 まー、『お酒を奢る』ぐらいだったらぜんぜん構わないんだけどね。


 みんなで素材を剥ぎ剥ぎしつつ、念のため俺は自分が何体倒したかを数える。


「マサキはいくつ倒したんだい?」


 ライラさんが訊いてくる。


「剣で6体。魔法もいれたら11体ってとこですかね」

「そうかい。アタイは……ひの、ふの、み……全部で14だね。マサキ、アタイの勝ちだね」

「……みたいですね」

「さあて、マサキになにをしてもらおうかねぇ……」


 嬉しそうに笑うライラさん。

 その時だった。


「ん? 穴……?」


 俺は、近くにある木の根元に、大きな穴が開いていることに気がついた。


「ライラさん、この穴はひょっとして……?」


 俺の質問に、目を細めて穴を見ていたライラさんが答える。


「これは……コボルトの巣穴に繋がってるかもしれないね」

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