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第19話 集う仲間たち その2

「わたしもムロンさんに鍛えてもらっているんですよ?」


 キエルさんはそう言って、えへんとばかりに胸を張る。


「ムロンさんに……ですか? 俺、ぜんぜん知りませんでした」

「フフフ、ムロンさんにはマサキ様に秘密にしてくれるよう、お願いしていましたからね」

「えー、なんでまた秘密に?」

「もちろん、マサキさまを驚かすためです」


 ペロっと舌を出して、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべるキエルさん。

 キエルさんは人狩りに遭遇して捕らえられた経験から、せめて妹のソシエちゃんぐらいは護れるようにと、こっそり特訓をはじめていたらしい。


「ムロンさんからは、ショートソードと弓の扱い方を指導してもらっています。ショートソードはまだまだですけど、弓の方はムロンさんと同じぐらいは上達しました」

「んなっ!? ムロンさんと同等とかマジですかっ?」

「はい!」

「すげぇ……。すげぇですよキエルさん!」


 狩人をやっていたムロンさんの技量は、一流とは言わないまでもかなり高いレベルにある。じゃないと冒険者ギルドで弓を教える教官(ムロンさんは武器全般教えられる)になんてなれないもんね。

 そんなムロンさんと短期間で同等になるなんて……。キエルさんの弓の才能はかなりのものなんだろう。

 精霊魔法が使えちゃう上に、弓も上手い。

 うん、仲間としてはかなり心強いんじゃないかな。


「マサキ様、それと……これを見てもらえますか?」

「ん、なんです? って、まさかこれはっ!?」


 キエルさんが胸元からひっぱり出してきた金属プレートを見て、俺は再びびっくらこいた。

 なぜなら、その金属プレートは、


「はい。冒険者カードです」

「いつのまに……」

「うふふ、これもいつかマサキ様を驚かそうと思って……」

「ひどいなー。でもすごい! ちょっと特訓しただけですぐ冒険者になれちゃうなんて、キエルさんすごいですよ!」

「そんな……マサキ様に褒められたら照れてしまいます」


 キエルさんはじもじしているけど、すっごい嬉しそうだ。


「いやいやい、すごいですって! 試験はなんでした?」

「薬草採取です」

「すげー! 実は俺、試験の時薬草見つけれなかったんですよねー。いやー、キエルさんすごいなー」

「わ、わたしは森と共に生きるエルフですから。精霊や木々の声を聴けば難しくはありませんでした」

「それでもですよ。それでもすごいです!」

「…………ありがとうございます」


 顔を真っ赤にしたキエルさんは、消え入りそうな声でそう言う。


「そ、それでどうですかマサキ様? わたしも一緒に連れていってもらえませんか?」


 照れ隠しなのか、キエルさんがちょっだけ大きな声を出す。


「んー、そうですねー……」


 俺とロザミィさんに続き、キエルさんまで家を空けるとなると、ひとり残されたソシエちゃんのことが心配だ。

 気になって訊いてみたところ、


「ソシエはリリアさんとお友達ですし、イザベラさんにとても懐いています。よくお泊まりにもいってもいるんですよ」


 あっさりと解決できてしまった。

 いままでもリリアちゃんがうちに泊まりにきたことはあったけど、まさかソシエちゃんまで泊まりに行っていたとは知らなかったぜ。


「一緒にいるとき楽しそうにしてますもんねー」

「はい。ソシエはリリアさんやイザベラさんのことをよく話しています。一番話すのはマサキ様のことですけどね」

「おー、嬉しいですね。となると、ソシエちゃんはムロンさんのお家にお泊りするから解決っと」

「はい」

「そしてキエルさんは冒険者」

「はい!」


 キエルさんが期待に満ちた眼を俺に向け、答えを待っている。

 弓の実力者で精霊使い。

 こんな同行者(仲間)、冒険者ギルドに依頼を出したって集まらないに決まってる。


 ソシエちゃん問題もあっさりと解決したいま、俺にお断りする理由なんかなかった。

 俺は立ちあがって右手を伸ばし、


「むしろ俺からお願いします。キエルさん、俺と一緒に来てください!」


 と言って頭をさげる。

 キエルさんは、俺の手を両手で包み込むように握り、


「ご同行させてくれてありがとうございます、マサキ様」


 嬉しそうに微笑んだ。

 酒場にいらっしゃる男性冒険者の皆さま方の顔は、もう怖くて見ることができなかった。





 キエルさんは、出発する日が決まったらお休みを取るといっていた。

 酒場で看板娘となったキエルさんに、もしものことがあったら二度とギルドに顔を出せなくなる。

 なんとしてでも無事に――というか無傷で依頼を達成しなくては。

 俺は強い決意を胸に、最後のひとりを探す。


 治癒師ヒーラーのロザミィさん、精霊使いで弓術にも長けたキエルさん、そんで自称魔法戦士の俺。

 なんかやたらと後衛が多い。

 最後の一人はゴドジさんみたいな前線で踏ん張る戦士か、ゲーツさんみたいな剣士タイプが是非とも欲しいところだ。


「さて、どうしたもんか」


 キエルさんとのやり取りを聞いていた男性冒険者の皆さま方から、たくさんの逆オファーを頂戴することはできた。

 美人な上、希少種族であるエルフなキエルさんにいいとこ見せようと思ったんだろう。


 高そうな鎧を装備した大男(未婚)、槍を肩に担ぎ「俺に任せておけ」とか、クールにキメてる優男(彼女ナシ)、古代遺跡で手に入れた魔剣(魔法剣)をさりげなくチラ見させてくる青年(友達ナシ。ぼっちなう)、などなど。

 非常に多くの売り込みがあった。


 しかーし!

 その全てをキエルさんがお断り。

 ひそひそ話でお断りの理由を訊いてみたら、


「あの方たちはマサキ様の悪口ばかり言うのです」


 と言い、プリプリ怒っていた。

 きっと、キエルさんを口説く過程で俺のことをボロクソ言っていたんだろうな。

 奴隷にされたキエルさんとソシエちゃんを、「俺が買う!」って言ったとき、いろんな噂がたってたみたいだしね。


「だれかいないかなー」


 冒険者ギルドを出て、プラプラ街を歩く。

 そんなときだった。


「おや、マサキじゃないかい」


 不意に名前を呼ばれたので振り返ると、そこには――


「あっ、ライラさん。おひさしぶりでーす」


 ゲーツさんのお姉さんである、ライラさんが立っていたのだった。

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