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95.もっとキスしていたいですが

タイトルどおり、キス回です。

ほぼそれだけなので、苦手な方は回避してください。

人の視線を感じながら、その人の前で目を閉じるのって、すごく無防備で、そわそわする。

いまの私、どんな顔をしているんだろう。


……絶対、ヘンな顔をしている気がする。


レイに呆れられたらどうしよう。

なにこいつ、じっくり見たら不細工だわー、ないわー、こんなのを好きとか思ってたなんて勘違いだったわーなんて、思われてたらどうしよう。


……こんなのよくないよって思っているのにキスをねだるように目を閉じてしまったのは、私もレイとキスしたいからなのに。


レイは私の顎に手をそえ、すこし顔を上にあげる。

目を閉じているのに、レイの視線を感じるようで、頬が熱い。

あぁもう。こんな緊張感に耐えられない。

さっさとキスしてくれればいいのに……!


たぶん目を閉じて待っていたのは、一瞬のことだったと思う。

だけど緊張している私には長いその一瞬だった。

緊張と羞恥で胸がいっぱいになった時、ふいに、唇に柔らかい弾力のあるものが重なってきた。

ふにっとした感触は、ただ一瞬、私の唇に優しく触れて、味も感慨も覚える間もなく、唇から離れてしまう。


え……、いまキスされた?

ほんの一瞬の、触れるだけのキスだった。

身構えていたぶん拍子抜けする。


だけど、私が目を開けようとしたとき。

また、唇にキスが落とされる。

今度のキスは、ほんのすこし、初めのキスより長かった。


私に触れてくるかわいた唇は、すこし震えているようだった。

二度、三度と数を重ねるたび、レイのキスはすこしずつ長く、すこしずつ激しくなる。

何度目かのキスを重ねたとき、レイの舌先が唇をするりと撫でた。


「ん……っ」


矢継ぎ早に与えられるキスに溶けていた理性が、その瞬間、私の中に舞い戻ってくる。


「これ以上は、ダメ」


じんわりと体は熱を帯びていた。

私の本能は、もっとレイのキスをほしがっていたけれど、私はかたくなに顔を下に向け、これ以上キスをする気はないって意思表示をする。


「……ん。わかった」


レイは名残りおしそうにしながらも、キスをやめてくれた。


よかった。

もう止まらないとかなんとか言って、無理矢理キスを続けられたら、どうしようかと思った。

力ではレイにかなわないし、なにより私の本能は、理性に反して、レイのキスを欲しがっている。


……本当は、心のすみっこには、レイが強引にキスしてくれればいいのにっていうズルい考えもあった。

そうすれば、私は立場的にレイに逆らえないからって言い訳をして、このままもっとキスできたのにな、なんてね。

これ以上関係を深くする覚悟はないくせに、レイが強引にその責任をかぶってくれたら流されてしまいたい、なんて。


あぁもう。ほんとにズルい考えだ。

イヤになる。


だけど、私がレイに惹かれているのは、こんな時でも、レイが私の意思を尊重してくれるからだと思う。

強引にされたいけど、実際に強引にされれば、私の意思なんてどうでもいいんだって失望していただろう。


ちぇ。レイってば、ほんとに私の理想通りなんだから、嫌になる。

これ以上、レイを好きになる覚悟なんて、私はまだできていないのに。


レイは私を抱きしめたまま、肩に頭をおしつけて、言った。


「ヤバい。ほんとに帰してやれなくなりそうだ」

読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマも嬉しいです。


昨日、投稿したつもりで忘れていたことに今気づき、がっくりです。

毎日投稿だけはがんばりたいなと思っていたので。

もしも待っていてくださる方がいらしたら、申し訳ございませんでした。

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