93.恥ずかしいのって慣れないものですが
「え？」
きっぱりと情けないことを言う私を、なぜかレイはとろけそうな目で見る。
この人、ほんともとの造りはクールに見えるのに、性格と表情が反比例だな。
「だからよ、お前のそういうとこが好きだ。初めは、面白いやつだなと思ってたんだよ。で、いつの間にかこんな感じになってたんだ」
「こんな感じって」
「……すっげー、好きってことだよ！」
レイは赤くなって、言う。
うぉ。だからそういう表情に、私は弱いんだってば。
ほんとはね、面白いヤツだと思って好きになるってどういうことってつっこみたい。
相変わらず失礼というか、なんというか。
そんなんが好きの理由で喜ぶ女子がいると思うのかっての。
……まぁうれしいんだけどね。
なんでだ。
「ああぁ、もう！その後もよー、美咲のすることって、ぜんぶ俺のツボにはいりまくりなんだよ！俺も助かるって約束させたり、警戒心はそれなりにあるみてーなのに、俺のことは信じまくってたり。いってらっしゃいとか、お帰りなさいとか言われたり。隠れて泣いていたのまるわかりなのに、俺の前では強がって平静にふるまったり」
不満が顔に出ていたのか、レイは羞恥をふりきるかのように、一息に言う。
「え、っと」
そんなにパキパキしゃべられると、息が顔にあたって、私の顔まで赤くなる。
客観的に見たら、私たちどんなふうに見えるんだろう。
顔を寄せ合って甘い言葉をつむぐ恋人？
なんか怒鳴っている男と、怒られている女？
恥ずかしさのあまり、よそ事を考えていると、レイはやけくそのように言う。
「いちいち全部なんだよ！美咲の全部がやたら気になって、好意を抱いてしまうんだよ。もっと俺に頼ればいいのにとか、泣くなら俺の前で泣いてほしいとか。こういうの初めてで、俺だって戸惑っているんだぜ？」
「えーっと」
恥ずかしい。
言わせておいてなんだけど、これは恥ずかしいわ。
でもレイは私以上に真っ赤になっていた。
うん、ごめん。
意外にレイってこの手のことに慣れてないよね。
出会って早々に、跪いて「守る」なんて言われたせいもあって、どうもレイは女に慣れていると思ってしまうんだけど、レイはそんなに女性になれていないのかもしれない。
「騎士」として人に対するときは、あまったるい態度も平気みたいだけどね！
跪いたりしちゃうしね！
…こればっかり言うのはなんだけど、だってインパクト強かったんだもん。
ああいうときには、どこか別のスイッチでも入っているのかなぁ。
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