84.確かに着るものにも困っていますが
いいんかい!
思わず心中でつっこんじゃったよ。
メアリーさんは、そんな私のつっこみを見越したように微笑んだ。
「今回はこちらのワンピースをお召しになって問題はございませんが、今後のために申し上げました」
恭しく言っているけど、なんか遊ばれている気がするのは、その含みがありそうな笑顔のせいですか!?
メアリーさんって、実はイイ性格してそう。
いや、ヘンに丁重に扱われても身の置き所がない気がするからいいんだけどさ。
微妙な気分で愛想笑いを浮かべつつ、じゃぁ着替えるかと立ち上がった時、ドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
メアリーさんが私に視線で了承を得てくるので、うなずきながら言う。
するとドアを開けに行ったメアリーさんを待たずに、ドアが開き、
「えっ。なに……」
あっけにとられた。
ドアを開けたのは、黒い詰襟の制服に身を包んだ男性だった。
そしてドアの向こうにいたのは、レイと、なんだか大きな箱を持った人がたくさん!?
「朝っぱらから悪いなー。お前が起きているっぽかったからよー、お前の意見も聞いたほうがいいんじゃねーかと思ってよ。入っていいか?」
「……いいけど、その方々はどちらさまでしょうか?」
着替えはすましているとはいえ、まだ顔も塗っていないんですけど?
はいってくんな!ってレイ一人なら言ってたかもしれないけど、知らない人がいっぱいいる状況では大人しく日和ってしまう。ええ小市民ですよ。
「お前の服を用意しようと思ってよー。無理がきく店に頼んだんだよ」
朝早くから悪いなーとレイが言えば、箱を抱えた人たちは口々に「いいえ」「そんな」「光栄です」と言う。
「私の、服?」
「余計なお世話だって言われるかと思ったけどよー。お前、服とかも持ってこられなかっただろ?ダイアモンドとじゃサイズもあわねーだろうし。とりあえずの着替えだけでも用意しようと思ってよー」
レイが言いづらそうにごにょごにょ言う間にも、お店の方たちはメアリーさんと協力して、持ってきた箱から服を取り出した。
箱から出てきたのは、色とりどりのワンピースだった。
私の感覚でいえば、ドレスに近いものも多い。
だけどデザインはそう奇抜でもなく、少々かわいらしすぎるかなと思うけれど、着てみたくなるかわいいワンピースが次々と箱から出てくる。
それから帽子や手袋、外套に靴。部屋着っぽいラクそうなワンピースや、下着らしきものまで、部屋のあちこちに並べられる。
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