74.お茶をいただきましたが
メイドさんがポットからお茶を注いでくれるのを見つつ、私は椅子に腰かけた。
お店で店員さんが給仕してくれているのと同じだと思うんだけど、どこかのお店に入ったときのようにお客様と店員という線引きがないから、なんだか落ち着かない。
この家で私、お客様扱いされてていいのかなぁっていう身の置き所のなさ。
だけど、そわそわしている私をダイアモンド様がいぶかしげに見てくるから、きっぱり居直ることにした。
ええ、わたくし、他人に給仕されることになんて慣れていますもの。
ぴんと背中を伸ばし、できるだけ優雅に微笑んで見せる。
お化粧はどろどろだし、疲労も顔に出ちゃっていると思う。
そもそもこちらの世界のマナーなんて、ぜんぜんわからないし。
だけどさ。ダイアモンド様のお家でお世話になるんだもん。
ぱっと見ただけでも、美人で優雅なダイアモンド様やレイと、ちょっとかわいいって言われるのが精いっぱいの私とでは、格差が激しい。
おまけにあちらは大貴族で、こちらは平民だと明かしている。
虚勢を張る気はないけれど、あんまり侮られるのもよくない気がする。
幸い今はみんな好意的だけど、私があまりにも自分で自分に価値がないというレッテルを張りすぎると、相手だって侮った対応をせざるをえない。
それってお互いに不幸なことだ。
元の世界に戻りたいし、そもそもお世話になる人に隠し事はしたくない。
それに、私は自分の生まれ育った国が身分の差をおしつけられることのない国だってことに誇りを持っている。
上流階級の出身でないことを卑下するつもりはないけど、それとこれは別だ。
ダイアモンド様はメイドさんに支持して、お茶にミルクとはちみつを入れてくれた。
私にも飲むよう勧めてくださったから、カップに口をつけた。
おいしい。
ほんのりとはちみつの甘味のあるお茶は、もとは苦みのある濃く出した紅茶にそっくりの味だと思う。
ミルクとはちみつとよく合って、ほわっと癒された。
それでも、動きや表情はできるだけ優雅に心得るのは忘れてない。
いまさらって気もするけど。
でもメイドさんには初めてお会いするんだし、レイたちの会話を聞いていると、このままメイドさんにお世話をしてもらうことになりそう。
仕えてもらう以上、それなりの人間だと思ってもらわないと、かえって相手に失礼だ。
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