71. そろそろ限界がちかいのですが
「え、そうなの?」
「ああ。風呂の湯は魔力で運用できるんだけどよー、シャワーみたいに細かい水を拡散して降らせるには、どうしても魔石が必要になるんだよ。で、魔石は魔力と違って高価なんだ。だからよ、ふつうの家じゃ、日常使いにはできねーんだよ」
魔石と魔力って、違うのか。
そのへんの自分の世界にはなかったものに関しては、どうしてもわかりにくい。
まぁいいや。そのへんはおいおい勉強しよう。
元の世界に戻るにも、魔力関係は調べなくちゃいけなさそうだしなー。
「いろいろシステムが違うみたいです。あちらでは、お風呂にシャワーは珍しくありませんでしたし、シャワーに魔石なんて使ってませんでしたしね。…といっても、私は自分の世界のお風呂やシャワーのメカニズムは知らないんですけど」
「こっちでもメカニズムまでは知らないヤツは多いから、気にすんなよー。ま、使い方だけ知ってりゃ、困ることもねぇしな」
「まぁね。でも残念。美咲さんがメカニズムも知ってたら、そっちの世界ではどうやっているか知りたかったな」
「シャワーがあると、髪を洗うのも便利だもんなー」
レイとダイアモンド様は顔を見合わせて、うんうんうなずいている。
「もっと普及させたいんだけど、魔石がなかなか、ねぇ」
「魔石も人工でつくってるんだけどよー、必要なぶんをおぎなうだけで精一杯で、余分な需要をまかなうのには追いつかねーんだよな」
この二人、ほんといろいろなことをやっているんだな。
ほんと尊敬する。
ダイアモンド様はシャワー室に入ると、私に手招きした。
「シャンプーとかトリートメントは、これを使って。ボディーソープは、これ」
ひとつひとつ指さして教えてくれるダイアモンド様にうなずきながら、ここでも私はほっとした。
思った以上に、この世界、いろいろ揃ってるな!
いやもう、中世っぽい世界かと思ってたし、お風呂はお湯とタオルを渡されて終わりかなと想像してたんだもん。
最悪、水浴びだったら、この寒い季節を耐えきれないと思ってた。
本当に、本当によかった!
となれば、私はいちばんの懸念事項を尋ねてみることにした。
いままで勇気がでなくてきけなかったんだけど、このお風呂を見ると期待できそう。
なにより、さっきからずっと限界が近いのを感じているんだよ!
タオルの置場を教えてくれるダイアモンド様にうなずいて、私は切羽詰まった声で切り出した。
「と、ところで、ダイアモンド様!お手洗いって、ありますか?」
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