7.分不相応な恋におちそうですが
「安心しろ。お前は、俺が守る」
男はそう言って、私を見つめた。
ばくんと心臓が大きな音をたてる。
あ、これはヤバいですね。心臓病ですかね。
ほら最近、年齢による衰えを日々感じているですよ…。
まだ健康診断ではひっかかったことはないんですけどね。
まぁ体は日々衰えていますからね。
なんてボケてみましたが、自分でも誤魔化せる気はしません。
騎士様がいい人過ぎて、ときめきがヤバイ。
なんですか、その笑顔!
そんな美形に真面目な顔で見つめられて、守ってやるなんて言われて、ときめかずにいられるほど乙女心は衰えてないんだからね!
ヤバいヤバいヤバい。
冷静にならないと。
手の届かなさそうな美形チート相手に、不毛な恋をできる年齢じゃないんだよ。
私が恋していいのは、結婚を前提に付き合ってくれる結婚に適してそうな人だけだ。
だいたいこの人、外見から察すると、たぶん北欧系だよね。
この白い肌、長身、顔の端正さは、北欧の人の特徴だ。
で、日本人のほうが若く見えるってことを念頭に計算すると、おそらく22歳か23歳くらい。
はい、アウト。
これだけ恰好よくて、強くて、優しくて、頼れて、10歳近く年下とか、どうやって落とせと。
こちとら彼氏いない歴イコール年齢の30歳目前女だというのに。
いや私だってそれなりにモテるんだよ?
人の好みは千差万別だから、かわいいとか、きれいとか言われる時だってあるし?
だけどさ。相手が悪すぎる。
よし、このときめきはなかったことにしよう。もったいないけど。
この非常時になに考えてるんだって感じの私の思考回路は、男にはもちろん気づかれなかったらしい。
微妙な表情で黙り込む私の態度を誤解したのか、男はおもむろに私の足元に膝をつき、私の手をとって、言った。
「信じろって言っているだろ。誓おう。お前を守り、俺も助かる。お前をこの森から連れ出し、お前の保護者のとこまで連れて行ってやるから」
ひざまずいたまま私の手を握り、真摯な目で、彼は言う。
なんだこいつ。
ほんとにいい人すぎる。
お姉さんは、君の人生が不安になるよ。
見ず知らずの女の命を助けたあげく、後の保障までする気だよ。
おまけにこっちは勝手にときめいたり、品定めしたりしてるのに、不安からかと思って気遣ってくれるなんて。なんていいやつなの。
悪い女に騙されまくりそうだ。
現にいま、私がこの優しさにつけこめないかななんて思っちゃってるよ!
だけどさ。私がこの人に助かってほしいって思っているのは、別に今後の安全のためじゃないんだけどな。
いまここでこれ以上議論してるの場合じゃないよね。
なにげに時間とりまくりだし。
あとこの構図、恥ずかしすぎます。
「信じてる。行きましょう」
私は彼の手をとり、うなずいて見せた。
彼は私の手をぎゅっと一度強く握り、
「じゃぁ、行こう。先導するから、ついて来いな」
そう言って、私の手をひき、走り出した。
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