69.犯罪レベルの悪いことはしないって誓えますが
私は、私が悪い人間じゃないってことは知っている。
私は、私。
頼りなくてボケてて、世の中の役に立つような人間じゃないし、嘘もつくし、ずるいところもある。
善人とも言い難いけど、泥棒をしたり、人に危害を加えるような大それた犯罪をする人間じゃない。
だけどレイは、私のことをほんのすこししか知らない。
なのに私を自分の家にいれてくれて、客人として扱ってくれるつもりなんだ。
ダイアモンド様が異世界への戻し方をご存じなかった以上、私はしばらく元の世界に戻れないかもしれない…、下手をするとずっとここの世界に居つくことになるかもしれないのに。
私はこの世界で生きていくために、その親切につけこんでのうのうとこの家のご厄介になろうとしている。
そんなの図々しくないとできないことだし、今は緊急事態だと自分に言い聞かせて、私は図々しく振る舞っている。
でもレイの行動のありがたさを少しはわかっているつもりだ。
彼は、私を信じると行動で示してくれたのだ。
私は異世界から来た人間で、レイにとってはうさんくさいことこの上ないだろうに、自分と自分の身内がすむ家で、私が住むことを許してくれた。
それは私が誰かの寝首をかいたり、誰かを手引きしてこの家に侵入させたりしないって信じてくれたってことだ。
もちろんこれだけのお屋敷だ。
警備もしっかりしているだろう。
けどそれにしたって、客人として招き入れた人間が犯罪をたくらんでいれば、ふつうに外部から侵入されるのを防ぐよりずっと難しいだろう。
なのに、ここにいていいよってレイは許してくれたんだ。
代わりにレイたちに利益になるものなんて、私にはなにもないのに。
ダイアモンド様や、バドーさん、ハキさんも同じだ。
彼らが信用したのは、私ではなくレイだろう。
だけど自分たちの大切な住まいや職場に闖入者が入り込もうとしているのに、認めてくれる。
バドーさんとハキさんが、レイやダイアモンド様のお部屋に近いところに、私の部屋を用意してくれたのは、その顕著なあらわれだろう。
これだけの感謝は、言葉だけじゃ言い表せなかった。
だから、この世界では馴染まない習慣だと知りつつ、つい頭を下げてしまったのだ。
初めに反応したのは、レイだった。
レイは頭をがしがしかきながら、
「おうよ」
「大歓迎だよ!」
ダイアモンド様も、レイに追随するように笑ってくれた。
見れば、バドーさんとハキさんも、控えめながら笑みを浮かべてくれている。
私はもう一度、頭を下げた。
じんわりと胸が暖かかった。
読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマも嬉しいです。




