67.話し合いは終わりのようですが
意味ありげにダイアモンド様に視線を送られたレイは、夢から醒めたように、はたと顔をあげた。
「は?なにをだよ?」
「だからさぁ。私が魔術に詳しいから力になるよって言って美咲さんをこの家に連れ込んでさ。で、私がこっちに来る間に美咲さんともっと仲良くなってー、で、私が異世界への帰し方なんて知りませんって言うじゃん?そんで落胆する美咲さんに求婚…」
「お前、いっかい黙れ」
つらつらととんでもないことを言うダイアモンド様を、レイは呆れたように静止した。
「俺がそんなこと考えると思うか?」
ごめんなさい。
ほんの一瞬、ダイアモンド様の言葉に耳を傾けてしまいました。
肩をすくめてダイアモンド様の言葉を一蹴するレイを見て、申し訳なくなる。
レイがそんな人だとは思っていないのに、ついそんな考えもあるのか、なんて思っちゃってた。
だけど発言者であるダイアモンド様は、はなから自分の言葉が外れていることはわかっていたみたい。
「思わなーい。あんた真面目だもん。それくらいしてほしいってのが本音かも」
「お前なぁ…。美咲は、いま知らない世界に来て不安なんだぞ?今日は一日、肉体的にも精神的にもつかれてる。さっさと休ませてやりたいんだから、くだらないこと言って時間とるなよ」
「くだらなくなんてないっしょ。……でも、美咲さん、ごめんね。とりあえず、今日はもう寝る?」
正直、もう寝たい。
だけど、自分についての話し合いの最中なのに、そういうわけにはいかないよね。
「いいえ、私はまだだいじょうぶです」
「遠慮しないでよー。レイが好きな女の子を連れてくるなんて初めてだから、つい遊んじゃった。ごめんね。異世界から来たんだし、美咲さん疲れているよね。今日はもう休んで」
ダイアモンド様は立ち上がり、ハキさんに部屋を用意するように頼んでくれた。
「ハキさん。というわけで、夜中に申し訳ないけど、美咲さんのお部屋を用意してくれる?」
「かしこまりました。お部屋はいかがいたしますか?」
ハキさんは、私が異世界人だなんてとんでもない話を聞かされていたにも関わらず、迷いなくダイアモンド様の指示を仰いだ。
さっとソファから立ち上がり、ダイアモンド様へと顔を向ける。
「暖かいお部屋をお願い」
ダイアモンド様に目礼して、ハキさんはちらりとバドーさんを見た。
バドーさんはハキさんと目が合うと、小さくうなずく。
ハキさんはうすく笑って、ダイアモンド様とレイを見て言う。
「では、ラナンキュラスの間をご利用いただいてもよろしいでしょうか」
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