表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/162

65.まだ失恋の覚悟なんてないですが

思わずダイアモンド様の手を振り払って叫んでしまった。

無礼だけど、許してほしい。

だって、


「私は異世界の人間ですよ!?レイともさっき知り合ったばかりですし!!」


私としては、これでこの話は終わりだと思った。

だってレイはこの世界では有数の貴族の家の人間で、元当主で、今もなにやら偉いらしい聖騎士だそうだ。

そんな人間が身元も怪しい女と結婚なんてするだろうか。

たとえ本人が望んだところで、貴族社会的に許されるのだろうか。


時代小説や王家アリの少女小説の定番だよね、身分違いの恋のために周囲に反対されるって。

まっさきに反対すべきレイの肉親が、まっさきに諸手を挙げて賛成するなんて、おかしいよ!


そういうことをつらつらと述べたけど、ダイアモンド様はきょとんとして手を振った。


「あー、そういうのぜんぜん問題ないから。レイは美咲さんが好き。美咲さんもレイのことを好いてくれているんでしょ?だったら問題ないの。癒し人の結婚は、聖なるもの。お互いがお互いを望んでいるのに、それを咎めたり軽んじたりすることは、王様にだって許されないことだから」


おふぅ。癒し人って、そんな存在なの!?

婚姻に関してのみとはいえ、王を筆頭に誰からの干渉も受けないなんて、むちゃくちゃ特権階級じゃないの。

ふつうの人っていうより、神に近い存在なのかなぁ。


「えっと。いやでも、そもそもレイが私のことを好きっていうのが、ダイアモンド様の勘違いなんです」


ダイアモンド様の勢いに流されそうになったけど、根本的に前提がまちがっているんだよ!

私も立ち上がって抗弁すると、ダイアモンド様は心外そうに言い放った。


「なに言ってるの。私とレイは双子なんだよ。レイの考えていることなんて、お見通しだっての。ねぇ、レイ。あんた美咲さんのこと好きでしょ」


や、やめてええええええええええええ!

さっき自分の気持ちを自覚したところなのに、速攻失恋なんて哀しすぎる。

ましてしばらくこのお屋敷にお世話になるのだ。

顔を合わせる機会も多いのに、気まずいじゃないか。


背中にへんな汗が流れる。

レイのほうを見るのがこわくて、視線を目の前のダイアモンド様に固定し、コートの袖をぎゅっと握る。


「や。まぁ、よー。嫌いじゃねぇけど。結婚とかはないぜー」


ほ、ほらね。やっぱり。

レイは優しいから「嫌いじゃない」って言ってくれている。

迷惑かけ通しなんだし、それでも十分にありがたいよね。


そうわかっている。

でも、やっぱりキツい。


ふつうにしていなくちゃおかしいと思われる。

だけど私の視線は下に落ち、ぐっと奥歯を噛みしめた。

こんなことで、泣くわけにはいかない。


出会ったばかりの人なのだ。

一瞬、恋に落ちただけ。

泣くほどのことじゃない。

読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマも嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ