62.思えばいっぱい勉強してましたが
こっちの世界の人との隔たりを感じる…。
平民、平民ってさぁ…。
知識では階級社会とかわかっているんだけど、いちいち現実で反応されるとなんかこう…イラっとくる。
愛想笑いがひきつりそうになって、いかんいかんと脳内で自分をなだめる。
こっちの世界とは常識が異なるなんて、わかっていたじゃないか。
ましてやこのおうちではしばらくお世話になるんだし。
いちいち怒っちゃだめだ。
平常心平常心と自分に言い聞かせつつ、もう一度気合をいれて愛想笑いをつくる。
「昨今では仕事の上でも研究などでも、外国との情報交換や提携は欠かせませんので」
「一般の平民でも外国語の取得が必要になるレベルで、交流があるってこと?!」
「いろいろネットワークや産業が発達しておりますので」
「……美咲」
「はい」
レイは私の隣に腰をおろし、至近距離で私の顔を覗き込む。
その紫の目に見つめられて、一瞬、ダイアモンド様やバドーさんたちの存在を忘れそうになる。
自分の気持ちを自覚したら、さっきまでよりもレイの親しげな態度に心が踊らされる。
そういえば、最初に出会った時が緊急事態だったからか、レイは私に最初から親しげだったな。
この街につくまでは、レイの性格かと思っていたけれど、街の門兵さんやバドーさんたちに対しての態度は親しげではあるけれど、一線はひいた態度だ。
すこし硬く、自然に支配階級らしい振る舞いに見える。
今だって、バドーさんとハキさんが控えているせいか、言葉遣いはきちんとめだ。
今もレイは私の顔を覗き込むように、間近によせてくる。
視線と視線が合って、なんだか恥ずかしい。
照れて視線をそらしそうになって、今のレイは、ひどく真面目でひたむきな目で私を見ていることに気づく。
「他にもなにか学ぶのか?すべて教えてくれないか?」
「すべてですか」
レイは熱っぽいまなざしで私を見てくれるけど、そこには色っぽい意味はなさそうだ。
それを残念に思う気持ちもないではないけど、レイの真剣さに押されて、記憶の引き出しを開けた。
「その他ですと…。国語だと名著や詩を暗唱したり、自分でもつくったり。文章のよい書き方や古い文字も学びますね。植物の植生や仕組み、立法をはじめとする法制度、産業の仕組み、楽器の演奏や楽譜の読み方、料理の作り方や人の体に必要な栄養素、絵画、彫刻、裁縫、刺繍、体力の増強を兼ねた運動……」
「まだあるの!?」
「ざっと思い出したところだと、こんなかんじでしょうか。私は計算の発展形である算数や数学などが苦手でしたので、その分野は詳しくないので申し訳ないのですが」
閲覧、ブクマありがとうございます。
さっさと話をすすめようと思っているのに、なぜかどんどん長くなります。




