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6.運動は得意じゃないのですが

ちょっと長めです。

もともと運動は得意じゃない。

そのうえ、大学生の時から10年近く運動らしい運動なんてしていない。

たまにダイエット熱に浮かされた時に走ったり、泳ぐくらい。

それだって、年に数日ってレベル。

おまけに、いま履いている靴は、ムートンブーツ。

飛行機での長距離移動でもラクで暖かいから、冬の海外旅行で欠かせないアイテムだけど、走るのには適していない。


男は、さっきの戦いぶりを見ていても、運動神経はチートだ。

走るのも速かった。

比べるまでもなく、私は足手まといになってしまう。


さっきあの場所にいた時は、私も彼も、あの獣に殺される可能性は同じくらいだった。

獣は目の前にいて、私たちはあの獣を倒さなければ、逃げる術がなかった。

だから彼が獣と戦うって言った時、止めなかった。

だけど今は逃げられる確率が、私と彼ではまったく違う。


男はヨーダという獣をあっさり倒していた。

だけどあれが集まってくるというなら、危険がないはずない。

男が集まってくるヨーダとの戦いではなく、逃げるという選択をしたのも、複数のヨーダを相手にするのは危険だからだろう。


いま会ったばかりの人に、そんな危険をおかしてまで助けてとは言えなかった。

ほんとは、言いたかったけど。


この人がいなかったら、私は絶対、あの獣に殺されるよなぁ。

さっきあの獣に食われると思った時の恐怖を思うと、今でも体が震えそうだ。


ほんとは、助けてほしいよ。

だけどそこまで甘えるのはフェアじゃない。


まだ会ったばかりの人で、彼のことはほんの少ししか知らない。

それでも、彼がいい人だという確証があった。

もし私を見捨てることになったら、この人はきっと自分を責める。

彼の知り合いでもなんでもない、ただの通りすがりの私なのに、自分が守れなかったことを責めちゃう人だ。

だから私は、この手が、脚が、震えているのを気づかれたくなった。

精いっぱいの強がりで、いざという時は自分を置いて逃げてねときっぱり言う。


だけど、彼はそんな私の精いっぱいの強がりが気に入らなかったらしい。


「ばぁか」


ニヤリと不敵に笑って、私の頭をぽんぽんと叩く。

それは、さっきヨーダと戦う前、私を安心させるようしてくれた仕草と同じだった。


「言っただろ。ヨーダなんて、俺の敵じゃないって。ただ相手が多いと、お前に万が一のことがあるかもしれねぇし、幸いここは街に近い。あいつらは森からは滅多にでないから、一気に森を抜けて、それでも追いかけてきたやつだけを倒す。その前にお前を安全な場所に避難させたいってだけだ」


「安全な、場所?」


「そうだ。俺を信じろ。だいじょうぶ、お前は助かる。見捨てたりなんてしねぇよ」


大きな白い手が、私の髪をなでる。

大らかに笑う彼の顔は自信に満ちていて、私は彼に頼りきってしまいそうになる。

だけど。


「あなたは?」


それを問わずには、いられなかった。


「あなたも、絶対に助かるよね?」


すがるように、彼の目を見つめる。

彼は笑い飛ばそうとしたけど、私が思いつめた顔をしていたからだろう、真面目な顔で言ってくれた。


「約束する。二人とも無事で、逃げるぞ」

読んでくださり、ありがとうございました。


おはようございます。

今日は、お友達の結婚式です。

なのに雪が積もっていて、どうやって行こうかとおろおろ中です。

でも、書いちゃいます。

ブクマとか評価とか嬉しすぎて、調子に乗っています。

ありがとうございます。

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