58.衝撃のカミングアウトなのに驚かれませんでしたが
「異世界ってさぁ…」
呆れたというダイアモンド様の視線が痛い。
ごめんなさい。
突拍子もない話を突拍子もなく語ってます。レイが。
内容が突拍子もなくなっちゃっているのは私のせいだけど、もうちょっと語り方とかあるよね!?
つい恨みがましくレイを睨んでしまう。
だけど、さすが双子というべきか、レイはダイアモンド様の性格をちゃんと把握していた。
ダイアモンド様はふわふわショールをもてあそびながら、ゆったりと足を組んで言う。
「ここと違う世界ってこと?」
「あ、はい。そうです。すみません」
ダイアモンド様と目があって、私は意味もなく謝ってしまう。
するとダイアモンド様は、組んだ脚の上に肘をつき、くすりと笑う。
「や。なんで謝ってるの?」
「えっとなんとなく…。驚かせてしまって申し訳ないというか」
「えー?それって別に美咲さんが謝ることじゃないよ。っていうかさぁ。ほんとに異世界から来たの?」
ダイアモンド様、なんでこんなに落ち着いているの!?
弟が連れてきた見知らぬ女が、異世界から来ましたーなんて言ったら、話の内容が真実であれ虚偽であれ、警戒するのが普通だと思うんだけど。
ダイアモンド様はゆったりとした態度で、興味深そうに私の全身を観察している。
その姿からは、警戒は見当たらない。
「たぶん、としかいいようがないのですが。少なくとも私の世界では、月が赤くなったり、魔獣がいたりというようなことはないんです。あと、癒し人もいません」
「へぇ。なんだかピンとこないや。私も癒し人なんだよね。……そっかぁ。私と同じ種類の人間って、美咲さんの世界ではいないんだ」
「少なくても私は聞いたことがありませんし、公になっていることはないと思います」
私にできることは、誠実に答えることだと思う。
ダイアモンド様の質問に答えながら、そっとバドーさんとハキさんを見ると、二人はまだ強張った顔をしているものの、さっきよりは有能な使用人らしい平静さを取り繕うことに成功している。
「美咲さんは、自分が知らないことは公になっていないこととイコールで考えるんだ?てことは、そちらの世界の要人ってこと?それとも賢者かなにかなの?」
ダイアモンド様はぐっと身を乗り出して、食い気味に言う。
「いえ!違います。私はごく普通の平民です」
ご期待に応えられず、申し訳ない。
だけど大げさな期待をされても困るので、きっぱりはっきり言う。
がっかりさせるかと思ったけど、ダイアモンド様はきょとんと首を傾げた。
「そうなの?だったら美咲さんの世界でも癒し人がいたけど、美咲さんは知らないという可能性もあるんじゃないの?」
読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマも嬉しいです。
最近、夜型生活になってきています。
今日もぎりぎりのupです。
そろそろ朝方に戻したいです。




