55.図書室に移動しましたが
「あー。美咲さん、かわいい。レイにはもったいない!」
「ふぉっ」
うだうだ考えていると、ダイアモンド様がぎゅっと私を抱きしめてきた。
うわぁ。ダイアモンド様、細い。
たおやかな腕に抱きしめられると、その繊細さにどきどきした。
…なんかいい匂いがする。
「なーなー、それで二人の結婚式、いつなの?まだ決まってないの?私が決めていいの?」
「いいわけねーだろ!……だから、ダイアモンド!お前もちゃんと話を聞けよっ」
ダイアモンド様が私を抱きしめながら上機嫌でいうと、レイは私とダイアモンド様を引きはがしながら、一喝した。
「バドー!悪いがハキさんを呼んで、図書室まで来てくれるか。全員一緒に話を聞いてもらう」
「かしこまりました」
バドーさんは頭をさげて、奥へと下がった。
「なんだよ、なにかあるの?」
「だからそれを今から説明するから。俺たちも図書室に行くぞ。美咲も疲れているところ悪いけどよー、もうちょっとだけ付き合ってくれな」
「はい」
疲れているけど、話って私のことだよね。
これからお世話になるんだもの。
お話くらい、いくらでも付き合いますよーっと。
好奇心に目を輝かせて、ダイアモンド様が先頭に立って歩く。
レイは頭をがしがしかきながら、私に歩調を合わせながらゆっくりと歩いてくれた。
きらびやかだけど重厚なお屋敷の雰囲気に圧倒されながら歩いていくと、ダイアモンド様は奥まった部屋の扉をさっと開けた。
その部屋は、すべての壁面に本がぎっしりと入った書棚がうめこまれていた。
図書室だ。
ダイアモンド様はひらひらとドレスの裾をはためかせながら、あかあかと燃える暖炉の前におかれたソファに腰かけた。
レイはダイアモンド様の対面にある椅子の隣に立ち、私にそこに座るように促した。
立ったままのレイを気にしつつ、私はバッグをおろし、ソファに腰かけた。
やわらかなクッションに身を沈めると、どっと疲れを感じる。
暖炉の火が冷えた体を温める。
椅子やソファはまだたくさんあったけれど、レイは座らず、暖炉のかたわらに立ち、腕をくんだ。
「失礼いたします」
扉が開き、バドーさんが年配の女性を伴って入室した。
女性はバドーさんより少し若いくらいの年ごろだろうか。
白いものが混じる栗色の髪を首の後ろにきちんとまとめた優しそうな女性だった。
「バドー。ハキさん。こんな時間に申し訳ない」
「いいえ、旦那様。なにかわたくしたちに御用ですと伺いました」
女性がレイの目を見てこたえると、レイはバドーさんとハキさんに座るよう促した。
「私たちはこのままで」
「いや。ちょっと込み入った話なんだ。座ってくれないか」
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