54.恋をしてしまったようですが
あー。あー。あー。あー。
なにやってんだ、私。
もう明日には30歳になるし、全力で結婚したいし、だから結婚向きな人と付き合って結婚したい。
なのに、なぜ異世界人の貴族に片思いなんてしているんだ。
なんかさぁ。
私ってほんとこういうとこだめだよね。
友達はみんな就職したり結婚したり子ども生んだり、いろいろ人生の「すべきこと」を成しているのにさ。
いまだに恋人もまともにいなくて、仕事も正社員にもなれてなくて。
ほんとはさ、ロンドン旅行を最後に、お見合いとかがんばって結婚しようって思ってたんだよ。
がんばってがんばれば、結婚できるかなって。
そうしたら自信ない自分にも、ちゃんと地に足のついた人間になれるかなって思ってたのに。
実際は、こうだもんなぁ。
自分で自分にあきれるよ。
だけどさ。
本当は、本当の本当の本心では、私はそんな決心をしきれないでいた。
結婚には、本当に憧れる。
誰かと二人で新しい家族をつくって、人からも認められて。
そういうちゃんと生きているって感じの人間になりたかった。
だけど一方で、結婚はほんとうに好きな人としたいっていう気持ちもあって。
かっこよくて優しくて私のことをほんとうに愛してくれる人と…、結婚したいから妥協して私を選ぶ人じゃなく、私と出会ったから結婚したくなったって言ってくれる人と、結婚したいっていう気持ちが捨てきれなかった。
私自身だって、この人と一緒にいたいという気持ちがあるから結婚したいって思えたらなって思ってた。
少女マンガと小説の愛読者なんだもん。
そんなふうに考えちゃうのは、当然じゃない?
でも、もう30歳だし。
はやくそんな夢には見切りをつけて、現実と折り合いをつけて、未来に踏み出さなくちゃって。割り切ろうとしていた。
だけど、ダイアモンド様に言われて気づいた。
私、もうレイのこと好きになっちゃってる。
あんなに好きにならないように警戒していたのに。
いつのまにか、心はすっかりレイに惹かれていた。
ほんと、なにやっているんだろう。
やらなくちゃいけないことをちゃんとやれない自分のダメさがいやになる。
だけど、それなのに、この気持ちが嬉しい。
私にも、こんなふうに人を好きになれるんだなって思っている。
誰かの言葉にどきどきして、期待して、そんな自分がコントロールできなくて。
そんなのってダメなんだけど、だけど。
レイと、目があった。
それだけで、こころがうずく。
……もしかしたら、レイに出会うために、私はこの世界に来たのかもなんて。
信じられるほど乙女ではないけれど、一瞬だけ、そう思ってしまった。
読んでくださり、ありがとうございました。
主人公独白オンリー。リリカル回が続いてしまってます。
以前、好きな作家様が「サブタイトルないのさみしい」っておっしゃってたので、
このお話を書くときつけてみたのですが、だんだんタイトルかぶりそうでドキドキです。
話の内容は遅々として進まないのに、話数は多いからですね。
いつか同じタイトルをつけてしまいそうです。




