52.期待と否定の狭間にいますが
なんてね。
ダイアモンド様が嬉しいびっくり発言をしてくださったので、ノリで驚いてしまいました。
つい叫んじゃったかと思ったけど、ダイアモンド様もバドーさんも私のほうを見ていないから、たぶんセーフだったんだろう。
はー、でもびっくりした。
ダイアモンド様、なに言いだすかわかんないよね。
だってねー、レイが私のことを好きとかねぇ。
ないない。
そりゃレイは優しいし、私のことを見て顔を赤くしたり、あまあまなセリフを吐いてくれたりで、私もちょっとだけ、ほんのちょっとだけ期待したこともありましたよ?
けどさぁ。
レイのことを知れば知るほど、レイが私のことを好きになるなんて、ないなーって実感する。
レイってさ。
顔はとびきりの美形だし、優しいし、強いし、貴族だし、領民を思いやった施策をしている元当主様だし。
そのくせ気さくで、お人よしだし。
お仕事は聖騎士。
これはよくわからないけど、ダイアモンド様の発言をきいていると、地位とかお給料とかいいっぽい職業みたいだし。
これだけハイスペックな男なんですよ?
女子なんて、よりどりみどりに決まっている。
ゴージャスな美女から清楚系美少女までよりどりなんだよきっと。
30歳間近の喪女が期待するとか、おこがましすぎる。
まぁダイアモンド様は、私がレイの婚約者だって思っているから、そんなふうに感じちゃったんだろうな。
実際には、ありえないもの。
レイが私のことを好きなんて、さ。
……って、さぁ。思っているのにさぁ。
レイは首まで赤くなって、
「う…、い、いやその……」
とかなんとか口ごもる。
そんでもって私をちらっと見て、視線をそらして、また赤くなる。
おい。
これ、期待するだろ。
普通に期待するよね?
あぁ、もう!
レイがこんな反応ばっかりするから、釣り合わないって思っているのに、ついつい期待しちゃうんじゃない!
「レイ……」
思わずレイの名前を呼んだ。
レイは「うぁっ」とか妙な声をあげて、こっちを見る。
顔は真っ赤で、透き通った紫の目は潤んでいる。
好きなの?
レイが?
私のことを?
そんなありそうにもないこと、信じていいの?
「私も」
「で。結婚式はいつにするか決めているの?」
私も、レイが好き。
言いかけた言葉は、ダイアモンド様の発言に消えた。
結婚式?
って、もしかして、私とレイの?
結婚式?????
読んでくださり、ありがとうございます。




