48.美男美女の会話に入れませんが
「ダイアモンド!お前、来ていたのか?」
美女の姿を認めたレイは、彼女に向かって両手を広げた。
すると美女はためらいもなくレイの胸へ飛び込み、満面の笑みを浮かべる。
「ああ。久しぶりだなー、レイ」
「そうだな。前に会ってから、何か月ぶりになるんだろうな」
二人はぎゅっぎゅとハグを繰り返し、頬にキスを交わした。
……仲良しですねー。
「ダイアモンドは、しばらく王都にいるはずだろ?なんでこっちに来たんだ?エドモンドも一緒なのか?」
ひとしきり再会を喜んで気がすんだのか、レイはふと真顔に戻って尋ねる。
「ばーか。エドモンドは王都だよ。あいつはブロッケンシュタイン家の当主だからね。そうそう動かせないって」
エドモンドに会えなくて残念だったなと美女が嗤うと、レイはあっさりとうなずいた。
「ああ。ほんとうに残念だ」
うーわ。やっぱりレイって筋金入りのブラコンだわ。
美女の言葉は単純にレイの質問に答えたってだけじゃなく、嫌味が3割と切なさが1割くらい混ざっていたと思う。
だけど美女は、レイのそんな態度に慣れているようで、不機嫌そうに顔をしかめて、自らきっぱりと抗議する。
「お前なー。そこは否定するところだろ。私に会えたからいいですとかなんとか言うべきだろ。エドモンドに会えなかったから残念だとか、ぬけぬけ言ってるんじゃねぇだろ」
「あ…あぁ、それは悪かったな。ダイアモンドに会えたのも嬉しかったぜ?エドモンドにも会いたかったけどよー。それにしてもよぉ。エドモンドに仕事があるように、ダイアモンドだって王都で仕事があるだろう。だいじょうぶなのか?」
「私は仕事で来ているんだよ。フィー様のお供なんだ」
「フィー様もいらしているのか?」
うーん。レイと美女は久しぶりの再会がよほどうれしいのか、矢継ぎ早に会話を続ける。
すっかり私のことなんて忘れ去られてるわ、これ。
まぁいいけどさー。
美男美女のきゃっきゃうふふしている姿は、目の保養になるし。
だけど会話に登場する固有名詞が知らないものばっかりだから、気になっちゃう。
誰が誰なのかなーって。
「ああ。もうお休みになっているけどな。で、フィー様は青の間を使っていただいてて、ひなげしの間は私が使ってるんだよ」
「そうか、ダイアモンドが使っていたのか。……バドー、すまない。きちんと話も聞かず、無理を言ったな」
あ。レイが謝った。
バドーさん何度も説明しようとしていたのに、ぜんぜん聞いていなかったもんね。
でも自分が雇っている人に対しても、間違いを認めて謝罪できるのって、いいなぁと思う。
そういうところ、レイらしいなぁとも思う。
知り合ってから経過した時間は短いけど、濃い体験してきたもの。
レイの性格も、だんだん想定できる。
困るのは、レイのことを知れば知るほど、好きになっちゃうことだ。
読んでくださり、ありがとうございます。




