47.お屋敷に、美女があらわれましたが
うわ。傍にいてやりたい、ですって。
レイの言葉って、ちょいちょい破壊力ある。
はやく一人でごろごろしたいなーってのが本音だけど、好意を持っている相手にそんなこと言われたら嬉しくなっちゃうじゃないか。
ちょっと頬が熱い。
いい歳して、乙女な反応してすみません!
けど、レイは背中を向けているし、バドーさんからはレイが邪魔になって私の姿は見えないはずだからいいよね。
と自分に許可を出して、思う存分にときめきを味わう。
こういうドキドキって貴重品ですからね。味わえる時に味わっておかないと!
バドーさんはレイの強硬な態度にかすかに驚いたように見えたけど、そんな気配は一瞬で消し去り、重ねて断ろうとしているようだった。
「ですが、レイモンド様。ひなげしの間は」
「わかっている。ひなげしの間だと、俺の部屋に近すぎるっていうんだろう?しかしな、彼女の気持ちをおもんぱかってくれ」
レイの厚意は嬉しいけど、バドーさんを困らせるのは本意じゃない。
彼はこの家の執事で、使用人たちのトップだ。
彼に嫌われたら、このお屋敷にいづらくなっちゃう。
ただでさえ身元不明な女が転がり込んでくるなんて、このお屋敷で働いている人にとっては仕事は増えるわ、主の貞操や評判が気になるわで、迷惑の塊みたいなものだろうし。
主人であるレイが命じてくれれば、使用人さんも表面上は丁重に扱ってくれるだろうけど、そういう問題でもないしね。
人様にご迷惑かけないで済むならご迷惑かけたくないし、嫌われずにすむなら嫌われたくない。
これが小市民的常識ですから。
「レイ。私はどこのお部屋でも構わないわ」
慌てて口をはさむ。
だけど私の言葉は、階上からの凛とした声にほとんどかき消されてしまった。
「レイ。あんたね、ちゃんと話を聞きなさいよ」
私と同時にレイをたしなめたのは、鈴を転がすような澄んだ声。
なのに滑舌がいいせいか声量があるせいか、叱責する口調の言葉はどこか迫力があった。
声の持ち主は、玄関ホールの正面階段をゆっくりと降りてきていた。
その女性は、夢のように美しかった。
肌は青ざめたような白さで、肩で切り揃えられた髪は光をまとう銀色。
眠っていたのだろうか、ゆったりしたラインの白いシンプルなワンピースの上に、白いふわふわしたショールを羽織っている。
体のラインは隠されているけれど、その肢体の華奢さは隠しようもない。
けぶるようなまつ毛の下で輝く青いサファイアのような瞳だけが、彼女がまとう唯一の色だ。
まるで雪の精みたいだ。
見惚れていると、彼女は優雅な足取りで私たちのところへ歩いてきた。
読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマも嬉しいです。
今日は良いことがあったので、花粉症でげほげほしていても嬉しいです。
なので少し主人公の弁護を。
ちょいちょい打算的だったり黒かったりする主人公ですが、
彼女は真面目で世間体を気にするトロくて自分が不出来なのを知っている子です。
なので人に嫌われれることを恐れ、助けてもらえそうなときは全力で乗る。
元の世界でも、生きて、世間体を取り繕うのに必死。
そのくせお馬鹿なので、夢見がちだったりします。
弁護になっているのかな?
けなしているだけになった気もしますが、引き続き読んでいただけると嬉しいです。




