43.お姉さまと弟さんについて聴いていますが
「ああ。ありがと。まぁうるさい姉と、かわいい弟がいるからなー。うちは使用人もいいやつばっかだし。けっこう救われてるわ」
「双子のお姉さまと、弟さんですか。支えあえるご姉弟さまがいらして、よかったですね」
暗くなりそうな気分をきりかえて、明るくいってみる。
レイがあまり詳しく話さないのに、知り合ったばかりの、面倒ばっかりかけている居候が深く話を聞くのははばかられる。
いま、私がしなくちゃいけないのは、お姉さまと弟さんについて語ってもらうことかな。
少しでも、レイの気がまぎれるように。
私は、頭の中でテンションをあげる。
幸い、材料はごろごろしている。
レイと双子のお姉さま、ですよ?
絶対、美人さんですよ!
レイとそっくりだというなら、繊細なガラス細工のような美人さん。
ふおおおおおお。ご尊顔を拝見したいですー。
そして、かわいい弟さんですと!?
それはリアル天使ですね。
こちらもお会いしてみたいです。
あ、やばい。
ちょっとテンションあげすぎか。
他人のこととはいえ、目の前の人の近親者の死を思えば、心はどうしたって重くなる。
それを振り払うためとはいえ、あんまり明るく訊くのもおかしいよね。
私は暗がりの中のレイの横顔をそっと見ながら、尋ねた。
「お姉さまとレイって、よく似ていらっしゃるんですか?」
「俺とか?まぁ、似てるって言われるな。あっちのほうが、性格キツいけどなー。ガサツだし」
え。レイだって、貴族の子弟とは思えない言動なんですけど。
そのレイにガサツってい言われる女子って、どんなだ。
「弟はよー、すっげぇかわいいぜ!素直だし、努力家だしな」
レイは声を弾ませて言う。
どれだけかわいいんだよ、弟。
私の想像するところは、天使だな。
しっかしレイはブラコンなのか。
双子のせいか、お姉さんへの態度と違いすぎる。
ちょっと腹が立つぞ。
私は、妹がひとりいる「お姉ちゃん」だ。
だからなんとなくお姉さんに仲間意識を感じちゃうんだよね。
「レイって、ブラコンだったんですね」
私はかるい意地悪のつもりで言ってみる。
「ブラコンってなんだ?」
「弟がかわいくてかわいくて、度をこして溺愛している兄のことですよ」
「へぇ。じゃぁ俺はブラコンじゃねぇぞ?」
「そうですか?溺愛しているって感じでしたけど」
「そりゃ、あいつはかわいいけどよー。度を越しては、溺愛してねぇし」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅん?そうなんですかー?」
「そうだって。あいつ、やったらめったらかわいいしよー。あのかわいさに応じてかわいがろうと思ったら、今の俺がかわいがってやれてるレベルじゃ足りねぇくらいだって」
「あのですね。そういうのが、ブラコンだと思いますよ」
意地悪するつもりだったのに、こっちが疲れるわ。
レイって、真正のブラコンだわ…。
重い雰囲気は霧散したみたいだから、よかったけど。
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