42.ご家族について尋ねてみましたが、
「レイは」
覚悟を決めて、レイに尋ねる。
「んー?」
「こちらのお邸には、人がたくさんいらっしゃるっておっしゃっていましたよね?それって、ご家族が多いってことですか?」
気になっていたんだけど、訊けなかったことだ。
はじめに「人が多い」って聞いた時は、そんなに意識してなかったんだけどね。
寝泊まりするところと、元の世界に帰るための糸口をつかんだっていうだけで安心しちゃってたから、細かいところなんてあんまり頭に残っていなかった。
その後もいろいろこちらの世界について驚きの連続だったし。
そうこうするうちに、レイがどうやら相当わかくしてこのブロッケンシュタイン家の当主をしていたことがあるって知って、ますます訊けなくなった。
だって貴族ってたぶん、世襲制じゃない?
だったら若くしてレイが当主についたってことは、お父様はすでに亡くなっているのかもしれない。
もちろんただ当主の役目を息子に引き継がせただけで、お元気かもしれないんだけど、軽々に尋ねるのは躊躇された。
うまく会話の流れで訊けたらって思っていたんだけど、そんなスキルは私にはなかった。
仕様がないので、真っ向から尋ねてみる。
レイは、なんでもないことのように言った。
「いや。俺の両親ははやくに亡くなったからなー。家族は、俺の双子の姉が一人と、超かわいい弟が一人いるだけだな」
「そうだったんですか…。その、ご両親のことはご愁傷さまです」
あああああ。やっぱり軽々しく訊いちゃいけないことだったかなぁ。
レイ、まだ26歳だよ。
それで「はやくに亡くなった」って、まだほんの若いころにご両親をなくしているってことだ。
こちらの世界の寿命がどうなのかはわからないけれど、ここに来るまでに出会った人々を見ていると、けっこうお年寄りも見かけた。
地球とそんなに寿命が違うとも思えない。
なのにレイのご両親は、お二人とも亡くなっているわけで。
辛いだろうと思うけど、あっさり流そうとしているレイを過剰に気遣うのも違う気がするし。
いい年齢の大人なのに、こういうときにどう対応していいのかもわからない自分が情けない。
もし自分が、いま両親を亡くしたとしても、呆然としちゃうと思う。
この世界で無条件に甘え頼れる人がいなくなるって、すごく怖い。
心のよりどころがなくなって、すごく不安だと思う。
だけどレイは、それどころじゃなかったはずだ。
レイがむかし当主だったなら、この街をふくめた自分の領地を守り治めるという重い任務を、ご両親から受け継いだってことだ。
その重責は、私には及びもつかないことで、だから私はますますなにも言えない。
情けないかぎりなのに、レイはふっと優しい声で応えてくれた。
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