41.手をつないでいるだけですが
最近、夜更新になっちゃっています。
レイは、私があっさり「レイ」呼びに戻したことに気をよくしたみたい。
にっと唇に笑みをうかべ、
「ああ。歩いていくなら、さっさと行こうぜ」
門兵さんたちに小声で指示をして、私の手をひく。
う。なんか自然に手をつないでいるんですけど。
いいのかなー、これ。
門兵さんたちはかしこまった表情でごまかしているけど、お互いに視線で会話してるぞ。
私たちがいなくなったら、すぐ噂話が弾みそうだ…。
門兵さんたちに会釈をして、レイに手をひかれるままに歩いていく。
ぺたんこのムートンブーツは歩くのラクだけど、ちょっと大きめサイズだから、長時間歩くと足の変なところの筋肉を使っちゃって、痛くなる。
今日はほんとうによく歩いたしねー。
真っ暗な中、玄関までの道をてくてく歩きながら、道の両端に置かれた明かりをぼんやりと見る。
光っているのは足元だけだから、ライトアップされた夜景みたいなきらきらしさはないけれど、静かな庭をかっこいいなと思っている相手と手をつないで歩いていると、それだけでロマンティックな気分になっちゃう。
レイの手は、大きい。
顔は繊細な氷の人形みたいなのに、手はゴツゴツしていて、案外皮が硬い。
あの剣技を見れば、彼が一方ならぬ努力をしてきただろうことは想像に難くない。
この手も、その努力の証なのだろう。
手をつなぐって、どうしてこんなにどきどきするんだろう。
触れているのは手の平くらい。
握手くらいは、さほど親しくない人とでも、挨拶でする。
それと接触範囲はそう変わらないのに、好きな人と手をつないで歩くだけで、胸がざわざわするのは不思議だ。
ほんとにね、はやく家の中に入って、靴を脱いで、できればベッドとかでごろんごろんしたい。
いい加減トイレにも行かないとヤバいし。
だけどレイと手をつないで歩いていると、この二人きりの時間がもう終わるのが寂しい気もする。
だってさ。
レイの家を見て、そこに住んでいるだろう家族の方たちにお会いしたら、私たちの関係はそこで変わる。
何がとは具体的には言えないけど、こんな豪邸に住んでいるレイと、寄る辺のない私。
そこに第三者の視点が持ち込まれたら、私たちの関係は変わらざるを得ない。
いま私がレイに距離を感じつつも普通に接することができるのは、まだその「遠さ」をよくわかっていないからだというのもあると思う。
知ってしまえば、いまと同じようには振る舞えないと思う。
それは、少し怖い。
だけど、ここでお世話になるなら、避けては通れないことだ。
読んでくださり、ありがとうございます。
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