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4. 騎士様はチートですが

ブクマ、ありがとうございます。

にやにやしています。


ちょっとだけ残酷描写かもしれません。

騎士様vs獣。

あっという間の出来事だった。

男は身を起こしたと思うと、私たちが隠れていた藪の中から飛び出した。

そして、こちらに牙をむいて飛びかかろうとしている獣の前までまっすぐに走っていくと、腰に履いた剣を抜き、一閃した。

男の持つ剣が、淡い銀色に光る。

獣は反撃の暇さえ見つけられぬまま、どうっとその場に倒れた。


「え」


その速さ、あっけなさに、声を漏らしてしまう。

男との約束を思い出し、あわてて口を両手で押さえた。


剣で猛獣と戦うなんて、マンガや小説の中でしか見たことがない。

だから現実に猛獣を倒すには、どうすべきかなんてわからない。

だけど、人間が、飛びかかろうとしている獣よりはやく駆けることなんて、できるのだろうか。

それに、1mを超える大型の獣を一撃で致命傷を負わせるなんて、ありえるのだろうか。

チートな能力を持つ主人公たちだって、もうちょっと苦労していたような気がするのに?


だけど、そのありえないような光景は、まぎれもなく今、私の目の前で繰り広げられている。


獣は苦しげに吠え、地の上を這う。

男に切り付けられた胴から赤黒い血があふれ、真っ白だった獣の体を血で染めていく。

男は近くの大岩に跳躍し、そんな獣の上に飛び乗った。

そして、とどめとばかりにもう一度、獣の首に剣を突き刺す。


「グォオオオオオオオオオオオオオ」


苦しげな、低い断末魔が響き渡った。

獣は二度三度脚で宙を蹴り、そのまま動きを止めた。


男は、獣の傍らで、獣の様子を注意深く観察していたが、獣が動かなくなったのを見ると、ふぅと息をついた。

大型の猛獣をひとりで倒した直後だというのに、息もほとんど乱れていない。

真っ白だった男の頬には赤みがさし、瞳は戦いの興奮を宿して熱っぽいが、それだけだ。


男は銀に光る剣を握ったまま、獣の大きく牙をむいた顔の近くまで歩いていくと、獣の呼吸を確かめる。

獣は、もうこと切れていたのだろう。

男は剣を腰の柄に戻すと、男は乱れた襟元を正し、外套の埃を払った。

銀色の髪が、さらりと揺れる。


それから、男はこちらへ歩いてくると、藪の中に座り込んでいた私に手を差し伸べ、ぎこちない笑みを浮かべた。


「ここはひとまず、終わったぞ」


こんな時だというのに、私の心はどきりと大きく跳ねた。

読んでくださり、ありがとうございます。

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