39.門は開きましたが
ちょっと短めです。
まさかコレを「俺んち」なんて称する輩がこの世に存在するとは…。
お金持ちなんて地球にもいっぱいいるし、豪邸に住んでいる人もいっぱいいるだろう。
テレビとかで見たことあるし、ハリウッドの豪邸やロワールの古城めぐりもしたことあるよ。
でも自分のリアルな知り合いが、こんな豪邸を「俺んち」って言ったのは、ぎょっとするね。
だってね、どのくらい豪邸かというと…。
そもそも家が見えないんだよ!
レイが「ついたわ」っていったとたん、目の前にあった黒く光る重そうな門の扉がするすると開いた。
高い塀にはばまれて見えなかった「家」の外観がのぞけるかと思ったら、見えたのはまっすぐに伸びた道と、その両脇に並ぶ細長い糸杉の列だけだった。
一瞬、暗くてお邸は見えないのかと思ったけど、糸杉の根元には明かりが点々と置かれていて、その道がかなり長いことを示唆していた。
……どこまで続いているかはっきり見えないくらい長く道が続いていることだけは、はっきりわかったけど。
門が開くと、傍らに控えていたおそろいの服を身に着けたごつい男性が二人、胸に手をあてて私たちを迎えてくれた。
「エーリッヒ。イプス。遅くなったな」
「お帰りなさいませ、レイ様」
ごつい男性たちは、レイの隣に立つ私に一瞬目を向けたけど、すぐさまレイに頭を垂れた。
黒い外套の肩には、飛び立つ鷹の見事な刺繍が入っている。
黄色で形作られたその刺繍は、レイの剣と同じ意匠だ。
「馬車をご用意いたしましょうか?」
私のほうをちらりと見て、赤毛のお兄さんが言う。
「…そうだな。美咲。玄関まで馬車に乗るか?」
レイは私を気遣うように言う。
確かにここまでの道のりはそれなりに長く、私は疲れている。
だけどね。馬車って。家の門から玄関までどれくらいの距離があるっていうのよ!
読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマも嬉しいです!
1日1話目標、時間がぎりぎりになってしまいました。
今朝投稿したとばかり思っていました。
短くなってしまいましたが、明日もよろしくお願いします。




