36.緊急時の対処法をレクチャーされてますが
だけど軍部って、国の機関じゃないのかな?
それともこの街独自のものなのかな?
どちらにしても、レイは自分が連絡したら軍部が了承するって確信があるみたい。
根拠のないことは言わない性格っぽいから、レイにはそれくらいの権限があるってことかな。
なんかさ。
門でも私の身柄を簡単に保証してくれたし、レイって思っている以上に身分が高いんじゃないのかな。
めっちゃ気安くしてくれているけど、もっとへりくだった態度とっていたほうがよかったかな。
まぁレイはなんにも言わないし、表向きは婚約者ってことになっていますし?いまさらだから、態度を変えたりはしないつもりだけどさ。
でもレイとの距離感がちょっと広くなったように感じて、寂しい。
もともとあった距離なんだってわかってるけど。
ただそれは別として、この国のありかたが少しわかって、嬉しかった。
「事件や病気の時、軍部に連絡すれば対応してくださるんですね?」
「ああ。軍部に連絡が入ったら、事件なら近くにいる警備兵、病気や怪我なら癒し人か医者に連絡がいくんだぜー。だからよー、なんかあったらすぐ連絡すること。な」
「はい!」
そんなに何度も言わなくてもわかってるってば、なんて言わない。
にやにや顔が笑っちゃう私を見て、レイは不思議そうに首を傾げた。
「なんでそんな嬉しそうなんだ?」
「だって嬉しいんですよ。この世界でも、街の人がちゃんと大切にされているんだって知って」
「そうかー…。そういわれると、嬉しいんだぜー」
なんだか妙に照れたように、レイは目線を泳がせて言う。
「まぁ街の人間は、街の活力源だ。街が…っていうか、この領が守っていくのは当然なんだけどよー。本当なら軽いケンカや病気とかでもよ、ぜんぶ対応できりゃいいんだけど、そうなると人手が足りなくて手がまわらないから、まだそこまで対応しきれてないんだけどよー」
レイはごちゃごちゃ言うけど、そういう問題じゃないのだ。
「謙遜することじゃないですよ。確かにすべての事件や病気に対応できれば、それが一番ですけど。でも公の機関が街の人間を保護するって態度を表明していること自体が、街の人の支えになっていると思います」
この世界って絶対王政っぽいからさ、貴族やお金持ちが庶民を公然と虐げている世界でも不思議はないってひそかに覚悟してた。
ささいなことで罰を受けたり、場合によっては殺されたりしても、庶民は泣き寝入りするしかないような世界かもって。
それはただこの世界にお邪魔しているだけの私には、いかんともしがたいことだ。
だけどそんなのを目の当たりにしたいわけじゃない。
そもそも自分の身だって、今はレイに保証されているとはいえ、どうなるかわかんないんだし。
だけどここは、そんな理不尽な世界ではないみたい。
少なくても、この街では、庶民も最低限の立場を街から保証されている。
それって本当に嬉しくて、安堵できることだ。
「いい街ですね」
言うと、レイはなぜか顔を赤らめた。
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