35.この世界の文明レベルを探ってみますが
他国にお邪魔している以上、その国が自国よりも不便でも見下さない。批判しない。
その国の人の前なら、なおさら不満があっても表情にもださないこと。
これ、海外旅行の鉄則です。
自分で望んで来たわけじゃない異世界でも、それは同じだと心得ているの。
だけどさ、本音のところ、この世界の文明レベルって日本より劣っているっぽいんだもん。
街灯を見て、電気があると思って喜んだのがぬか喜びだったら、がっかりはしちゃうよ。
でもエネルギー源は違っても、効果が一緒なら普通に喜んでいいとこかな。
いい年齢して恥ずかしいんだけど、マッチもライターもつけられないんだもん。
ろうそくが光源の世界だったら、暗くなるたび誰かのお世話にならなくちゃいけないとこだった。
「街灯の他にも、魔力って使われているんですか?」
へこみそうな気分を笑顔でむりやり隠して、レイに尋ねる。
レイは「んー」と斜め上を見ながら答えた。
「いろいろだなー。明かり関係だろ、湯沸しだろ、冷蔵機に温熱器、連絡機とかな。…あぁ、そこに赤いポールの街灯みたいなのがあるだろ?」
「あ、はい」
「それが緊急用の連絡機なんだぜー。それの球体部分に手を触れて、呼びかけたら軍部につながるから。危険を感じたら、すぐそれで連絡しろよ」
「えええっと、は、はい!」
ちょっと待って。ちょっと待って。
さらっとレイが言ったことを、頭の中で反駁する。
……せーの。
やったー!!!
まだ詳しいことは聞いてないけど!名前からすると、明かり関係はあり、お湯も簡便に得られる、冷蔵庫っぽいものもあり、温熱機はわからないけど、連絡機って電話かトランシーバーみたいなものかな。
思ったより、文明が進んでいたよー!
よかったよー!
一気に気分が浮上する。
微妙に足が重くなっていたせいで先を歩いていたレイとの距離があいちゃっていたから、小走りで駆け寄った。
「緊急用の連絡機なんてあるんですねー。軍部に連絡って緊張するんですけど、どういう要件で連絡したらいいんでしょうか。誰でも使っていいんですか?」
「使うのは誰でもいいんだけどよー。基本は命の危険があるような重大な事件か病気や怪我の時しか使用不可なんだけどなー。お前はうちの客人なんだし、こっちの基準もわかんねーだろうし。とりあえず危険だと思ったらすぐ連絡しろ。明日には、軍部には連絡いれとくから」
「ありがとうございます」
うわ。それは本気でありがたい。
読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマも嬉しいです。
レイの家には、40話までにたどり着けたらいいなーと予想修正しています。




