33.あきれられている気がしますが
そんな照れるとこか?
レイの言動のほうがよっぽど恥ずかしいと思うんだけどな。
「俺が守る」とか真顔で言うとかハードル高いもん。
「いえ、こちらこそみっともない恰好にうつっていたら申し訳ないです。私の国では普通の恰好なのですが」
「だ、だよな。ほんと悪かった。二人の時は気にならなかったんだけどよ、他の男も見てると思うと急に気になってよー」
えっとその。
レイは気づいていないのかな?
それって思いっきり私に独占欲感じてるって言ってるようなものだんだけど。
そんでもって、それが嫌じゃない自分がいるわけでして。
あーヤバい。
これ絶対、私、レイのこと好きなんじゃん。
顔が熱くなる。
レイは自分の発言の意味には気づいていないみたいで、私がうつむくと、怒っていると思って「すまない」って謝ってくる。
違うんだよ。赤くなった顔を見られたくないだけなんだよ!
だって門兵さんたちが、生暖かい表情で私たちを見ているんだもん。
「あー……。仲がよくてよろしいことですな」
お髭の門兵さんが、呆れたように言った。
それでレイも、自分が独占欲丸出しの発言をしたことに気づいたみたい。
「あ」とうめいて、顔を手で隠してうつむく。
なんだこれ。
二人して赤くなって俯いてって、いい大人がそろいもそろってバカみたい。
だけど心は素直なもので、胸の奥がふわふわときめいている。
「えーと、では。イサカ様のことは管理部にお伝えしておきますということで。お二人とも、もう街へ入っていただいて結構ですよ」
ちらちら相手を伺いつつその場で動かない私たちに、門兵さんが街へ入るよう促してくれた。
ふと気が付くと、さっきまで門のチェックを受ける列は私たちで最後だったけれど、私たちの後ろにまた遠くから来たらしい商人の一団がこちらを見ながら待っていた。
「も、申し訳ございません!お待たせしました!」
やだやだ。いつから後ろに人が待っていたんだろう。
気づかずに、あんな恥ずかしいやりとりしてたなんて。
ぺこんと頭を下げると、商人さんたちはびっくりしたようにお互いの顔を見交わし、
「いやいや、いいもん見せてもらったぜ」
「若いっていいことだね。妻と出会ったころを思い出したよ」
「ま、幸せになんな」
と口々に言ってくれる。
門兵さんとお話してお待たせしたのを怒っていらっしゃらないのは助かったけど、商人さんたちの声音がからかいを多分に含んでいるのは仕方がないよね。
「は、はい!」
私がうなずくと、レイも商人さんたちと門兵さんに挨拶した。
そして私は、こちらの世界の街へと初めて入った。
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