31.おしゃれに自信なんて、初めからありませんが
背の高いレイを見上げて尋ねると、レイはぐっと言葉につまる。
「え、あ、いや。だからよー、似合っていると思う。見慣れねぇけど悪くねぇよ。……けどよー」
言いにくそうに口の中でもごもご言いながら、レイは私から視線をそらす。
やっぱりこの格好って、こちらの世界の人には見慣れなくて違和感なのかな。
それとも単に私の着こなしがなってないってだけ?
柔らかいピンクのニットワンピも、紺のダウンコートもお気に入りのものだ。
ふだん着ていると、友達とかには似合っているって高評価だったんだけどな。
私の顔立ちはおとなしめのお嬢様っぽい顔だし、色も白いから、こういう上品めかわいい恰好をしていると高評価なんだよね。
バリキャリっぽいスーツやセクシー系ワンピを着ても、なんか違う印象になっちゃうんで、けっきょくいつもこういう服装をしちゃう。
せめてカジュアル系が似合えばと思うけど、ああいう格好は真におしゃれな人じゃないと残念な感じになる。
しょせん服装なんて他人にマイナス評価を受けないように整えているだけってレベルの私のオシャレ度では、服自体が女子っぽいサインを示しているこの手の服がいちばん無難に高評価を得やすいのだ。
しょうがないじゃん、私の趣味は少女マンガや少女小説を読むことなんだもんよー。
おしゃれにまで磨きをかけている余裕もお金もない。
他人が見て「ヤバい」ってレベルだけは避けているんだから、見逃してくれ。
まぁこちらの世界と日本では、服装そのものがぜんぜん違うからね。そのための違和感ってのはあると思う。
でも別の国の民族衣装でも、おしゃれだったりお金がかかっていたりするものは、なんか素敵に見えるように、私から見たレイは黒いマントに白い詰襟軍服なんて見慣れない恰好なのに、凛々しくてかっこよく見える。
対して門兵さんたちは、まぁあれだ。フツー?
着ているのは制服なんだろうけど、ちょっとよれ気味だし、ベルトの締め方も適当っぽくて、とりあえず着ていますって感じが漂っている。……私と同じですね。
異世界だから服装に違和感があるならともかく、普通にダメ出しされているならへこむわー。
相手が隙のない美形だと余計にね。
しょんぼりとうなだれると、レイはますます焦って、付け加えた。
「やっ、なんていうかな。その。お前の世界の服装って、ちょっと体のラインが目立ちすぎじゃねーか?」
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